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〝君自身〟
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日が傾き始めた頃、人払いをして主人が病室に入ってきた。
「…自国でもないのに人払いなんかして大丈夫ですか」
「大丈夫だよ。―それより、ね。アイヴァン」
主人らしくもなく、バッサリと話を断ち切る。たった数日の付き合いだけど、今までこんなこと絶対にしなかった。
「さっきね、クロード・ベルジェ・シャロン卿を尋問してきたよ」
「…そうですか」
それを断って部屋を出たのだから、そんなこと、解っているのに。
わざわざまた報告する意味が解らない。
「罪を認めて、君について話してくれた。………ねえ、アイヴァン、君はこの国の王位継―「お辞め下さい」………」
「それ以上言ってはなりません」
「でも、「お辞め下さいと言っているんです!!!」…っ」
叫んだ拍子に思わず力んで上体を起こしてしまい、痛み止めが切れた脚に激痛が走る。そのまま重力に負けて再びベッドに沈んだ。
「……申し訳ありません」
そんな縛りなんていらない。今だって昔だって、そんな立場、権力、〝俺〟も〝私〟も求めていない。
そんなのとうに奪われた―否、捨てた。
「…僕は、〝本当の君〟が知りたい。君の口から聴きたい。君の名前、生い立ち、何もかもを、〝君自身〟から聴きたい。
誰が何と言おうと、君は、僕の対等な人間なんだ」
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