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記憶の波
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「音がたくさん、たくさん…っ」
中に踏み込むと、本当に音で溢れていて、秋人の声がまったく聞こえなくなった。隣を見ると、秋人も驚いていてパクパクと何かを訴えていた。
グイグイと腕を引っ張りながら回って行く。何かを体験するわけでもなく、ただ見て回った。
それだけで秋人は満足そうで、興味津々に他人がプレイしている姿に釘付けになっていた。
「すごかった、人の手が増えてみえた!」
「…なんでしょうねあの動き」
「教えてもらっても、あの動きは、できない」
その場を離れ、本屋へ入る。さっき見た出来事を嬉々と話す秋人に耳を傾けながら、人にぶつからないようエスコートする。
小説コーナーを見て回り、気になったものを何冊か購入して帰ることにした。
どうやら家にはない本ばかりだったようで、選ぶ間すごく楽しそうだった。
屋敷にもどり、ゆっくりソファーへ座る。秋人は少し疲れたようで、ぐったりとしていた。
無理もない。一日中店の中を歩き回ったのだ。歩くのに慣れてきたとはいえ……やはり断るべきだったな
「……あきら、きょうは楽しかった」
お茶の準備をしていると、ふいにそう言われた。秋人は俺の目をしっかり見つめ、なにか伺うように話した。
「ぜんぶ新しくて、初めてで、楽しかった。幸輝もいて……賑やかで。あきらは?楽しかった?」
一生懸命に気持ちを伝えてくる秋人。
俺も微笑みゆっくり頷いた。
「素敵な日になったようですね。私もとても楽しかったですよ」
「ほんとう!?」
「…っえ!?」
いきなり腕をガシッと掴まれ確認される。秋人の大きな声につい驚いてしまった。普段の秋人なら静かに笑うだろうから……
秋人はいつも以上に不安そうにしていて、様子がおかしかった。
「ほんとうに…? 晶は、本心で言ってる?その笑顔を見てたら時々わからなくなるんだ。僕は、おれは、上部だけの付き合いはいやだ!!」
「秋人っ!?」
秋人はだんだん崩れて倒れてしまった。顔も真っ青で苦しそうだ。
それにさっき、「おれ」って……?
色んなことが一斉に起き、脳の処理が追いつかないが、急いで医者と英二さんを呼びに行った。
幸い重い病気とかではなく、軽い脳震盪らしい。あと疲労と記憶障害が関係しているようだ。
少しずつではあるが、昔の閉ざした記憶が戻りつつあるらしい。
その後も秋人は中々目を覚まさなかった。
俺は片時も離れず看病するよう命じられ、メイドと共に側についた。
「……秋人、俺は本心でしか貴方とは話さない。もし少しでも疑われるようなことがあったら……それはすごく辛いことだ」
秋人の汗を拭いながら零すが、聞いてくれる人はいなかった。
それから秋人は1週間眠り続けた。
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