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懐かしいあの頃の人
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ゆっくり口を離す。
秋人は少しの間キョトンとしていたが、すぐにポポポっと頬を染めていった。
「秋人様……私のこと覚えていますね」
「し、知らない。かっ顔が近いっ!!」
恥ずかしいのかグイグイと俺の体を押し返すが、離さずに腰を引き寄せる。つい勢いあまって抱きしめ合う体勢になってしまい、互いの鼓動が直に伝わってきた。
「あっ…あ」
秋人は何故かさっきから小刻みに震えていて、さっきよりも顔を赤くしていた。
俺はそんな秋人の耳元で囁いた。
「秋人様……生きてください。お母様もそう望んでいるに決まってます」
「……うそだ」
「全ては叔母様が企んでのこと……お母様は秋人様を捨てたわけではありませんよ。本当に愛されておりました。その事だけは忘れないでいてあげて下さい」
秋人の目を見つめながら言い聞かせる。これまで洗脳のように嘘を吐かれ続け、それがまるで真実のように信じ込んでいた秋人は苦しそうに顔を歪ませる。
「それが本当なら……じゃあ何でお母様は助けに来てくれなかったの?」
「それは……」
「もういいよ、何も聞きたくない。何を聞いたってお母様の気持ちはここには無いんだから……」
ぎゅうっと秋人はもう一度俺の肩に顔を埋めた。
「今はおまえが居れば何もいらない……」
「おや、私のことは覚えていないのでは?」
悪戯交じりに笑うと顔をあげて秋人のほうからキスをしてきた。予想外で硬直してしまう。
「うそだ……全部覚えてる。でも俺はお前のことが嫌いだ。これは嘘じゃない」
「はい。信じます」
目を伏せてしっかりと秋人の言葉を聞きとる。
「あと、敬語はいやだ。秋人って呼べ……晶」
この人は……なんて可愛いのだろう
その一言一言でどこまでも溺れてしまいそうになる。
甘く掠れた声に導かれるように秋人をベッドに連れていき、包み込むように抱いて眠りについた。
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