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この際、地元の故郷に帰ろうかと思った。もともと両親は俺が東京に行くことを反対していた。
地元に帰れば両親は喜ぶだろう。
それにここよりかはマシだ。そんなことを思うと、急に故郷に帰りたくなったのだった。
まずは会社を辞めてから考えよう。
それから自分がしたいことを見つければいい――。
俺はベランダから部屋の中に目を向けた。テーブルの上にはさっき書いた退職届が置かれていた。
もう思い残すことは何もない…………
それに阿川のことを考えなくて済む…………
全部は自分のつまらない嫉妬だった。
一人であいつに嫉妬して妬んで。
そのたびに自分が嫌になって、嫌いになって。何もかもあいつのせいにした。
きっとその付けが回ったんだ。
だからもうあいつのことは忘れよう。
その方がいい。
きっともう二度と、あいつと顔を合わすことはないだろう。
あの日の夜のことは夢だった。
俺は夢を見ていたんだ。
あいつが俺のことを好きって言ったのも夢で、あいつに抱かれたのも夢だ。
あの日は本当は何もなかった。
そして阿川が、あの駅に一緒にいたのも夢だ。
……でなきゃなんであいつは次の日、俺の傍にいなかったんだろう。
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