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いつでも見ているからわかることと見ていてもやっぱりわからないこと
いつでも見ているからわかることと見ていてもやっぱりわからないこと
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俺の恋人は綺麗好きで几帳面だ。それなのに、恋人は最近、なんだか妙に本を散らかしたままでいるような気がする。本棚から出した本をきちんと本棚に片付けないでそこらへんに置きっぱなしにしておく。これが、俺がしたことなら別に普通のことなんだけど、なにしろ恋人がしたことだから俺は心配になって、恋人に、おまえ、最近よく本を散らかしてるけど、どこか具合でも悪いのか? って聞いてみた。
そうしたら恋人は、漫画でよくある、でっかい『ガーン!!』っていう文字が頭の上に浮かんだような顔をして、そ、そうか……た、確かに、散らかっているように見えるよな……ごめんな、今すぐ片付ける……とか言い出したもんだから、俺はあわてて、待て待て待て、違う違う! 俺、別に散らかってるって怒ったわけじゃねーんだ! もしかして、おまえが具合が悪くて片付けられないとかだったら大変だから聞いてみただけなんだ! って叫んだ。
そうしたら恋人はしょんぼりした顔のまま、君に、読んでもらおうかと思ったんだ……って言った。俺が、ん? って首をひねってると、恋人はシュンとした顔で、私が本棚に本を入れたままにしておくと、君は私に遠慮しているのか、なかなか本を手に取ろうとしないけど、そこらへんに本を置きっぱなしにしていると気軽に手に取って読んでくれるようだから……って言った。
俺は、思わず苦笑いしながら、おまえなあ、そんな回りくどいことしなくても、おまえが、この本面白いから絶対読め、って言ってくれりゃあ、俺はいくらだって、何冊だって読んでやるよ、って言ったら、恋人は大真面目な顔で、まさか、そんな、人に自分の好みの本を読むように無理強いするだなんて、そんなのまさに、傲岸不遜で無礼千万な行いではないか、って言った。
俺がやっぱり苦笑いしながら、そりゃ俺だって、おまえ以外のやつにそんなこと言われたら、うっせえクソボケ、読むも読まねえも俺の勝手だ! って言い返してやるけど、俺はおまえの恋人だろぉ? 恋人のおねだりだったら、俺ぁいつだって、いくらだって聞いてやるよ、って言った。
そうしたら恋人が、照れたように笑いながら、君はいつも、あまりにも私を甘やかしすぎる、っていうもんだから、俺は、だったらさ、おまえがお勧めの、ベッタベタに甘い、恋の話でも教えてくれよ、って言いながら、本を片付けようとしてる恋人の手に、そっと俺の手を重ねた。
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