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僕の現実問題
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うっすらと目を開けて、最初に見えたのは綺麗すぎる白だった。
綺麗過ぎて眩しくて、思わず目を細めたら、次に誰か女性の声がした。
誰だっけ?
頭がぼーっとして、うまく思い出せない。
でも、すごく懐かしい人。
声のした方に顔を向けると、涙をポロポロ流す女性が僕に向かって笑いかけた。
あ、思い出した。
母さんだ。
それをきっかけに色んなことを思い出した。僕の病気のこと、ヒトミのこと、シュウくんのこと、学校のこと。
鼻がツーンとして、目頭が熱くなる。それを全力で我慢して、僕は母さんに笑い返した。
「ごめん…ね?」
倒れちゃって。
心配かけて。
色んな意味を込めて言ったその言葉は、母さんをさらに泣かせてしまった。
そしたら、泣き止まない母さんの代わりに側にいたお医者さんが話しかけてきた。
「残念だけど、学校は行くのはもう諦めた方がいい。」
今回の怪我はどうしたのかな?
残念だけど、内臓が本当にもうボロボロなんだ。
このままじゃ、あと一ヶ月持たない。
お母さんを悲しませたくないだろう?
色んなことを言われた。
流石に耐えきれなくなったのか、僕の体の状況を話している時、母さんは静かに部屋を出ていった。
ごめんね。
部屋を出ていく母さんの背中を見ながら、もう一度さっきの言葉を思った。
上を見て、さっきは眩しすぎた白を見た。
その白も今はもう、眩しくなんて見えない。
僕はもう一度、お医者さんの言葉を思い出した。
正直、学校にもう僕の居場所はない。
行ったところで、どんな目に遭うかなんて分かりきってる。
「…………それでも、」
うん、それでも。
「やり残したことがあるんです。残してきちゃった後悔が、まだあるんです。」
殴られてもいい。
蹴られたって構わない。
なんだか少し可笑しくて、僕は小さく笑った。
だって、さ。
「好きなんですよ、それでも。」
ヒトミのことが。
みんなのことが。
僕に一番〝僕〟をくれた、みんなのことが。
これはもう、しょうがない。
好きなんです。
僕は、お医者さんの顔を見て、もう一度呟いた。
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