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僕の幸福理論
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学校内に入って、まず寄るのは職員室。
軽くノックしてドアを開ける。
「失礼します、光山東ですけど……」
「アズマくん!!!」
いきなり、しかもすごい速さでそう返されて思わず肩がビクッとした。
「…おはようございます、如月先生。」
ホント、心臓止まるかと思った…
如月先生は僕の方に駆け寄ってきて、車椅子を見て少し傷ついた顔をしながらも笑ってくれた。
そして、その声を聞いてほかの先生達も集まってきた。
「おはよう、アズマくん。今日から学校来れるんだっけ?」
「それにしても早いな。なにか用事でもあったのか?」
「はい。今日からまたよろしくお願いします。それと、また一つお願いがあって…」
「お願い?」
そう、今日早く来たのはちゃんとした理由がある。
「どこでもいいので、車椅子を置かせてもらえませんか?」
それは、この車椅子をどこかに置かせてもらうためだ。
「?でも、それがないとアズマくん歩けないんじゃないの?」
「少しの距離なら平気です。ここから教室までとか、教室移動くらいなら。」
そのために、目が覚めてから数日間頑張って部屋を歩き回ったりした。
手すりにつかまりながらだけど。
「無茶言ってるってことは十分わかってます。でも、どうしても、ギリギリまでみんなには知られたくないんです。」
頭の中で何度も考えた。
みんなにどう言おうか?「実はもう少しで死にます」?それとも、また「骨折しました」とでも適当な嘘をつく?
何故かどれも、嫌だと思った。
事実を隠してるのだって、嘘をついてるのと変わらないのかもしれない。でも、これ以上無駄な嘘はつきたくなかった。
「無理はしません。自分の限界も分かってます。でも、お願いします。」
そう言って頭を下げた僕を、先生達はお互いの顔を見ながら笑った。
「光山が無理しないって言ってもなぁ。今まで散々無理してるし、信じられないな。」
うっ……
「お母さんや担当医の方に校舎内は歩くと行ったの?」
ううっ……
「「「どうせ言ってないだろ/でしょ?」」」
うっ…_| ̄|○ il||li
完全に論破された……
「……でもまぁ、それがアズマくんらしいっていうか、ね。」
如月先生の声に顔を上げると、仕方ない、と笑った先生がいた。
「そうなんだよなぁ。まったく、こんな生徒だとは思ってなかったよ。正直驚きだ。」
本当にそうだな、全く最近の若者は、と口々に言いながら笑う先生達。
その口調はとても優しくて、それが意味することを思って涙が出てきた。
甘いんだよ、うちの先生は。
「でもまぁ、アズマくんか頑張ってるのは俺達も知ってるからね。」
ほら。
「いいだろう。端の方でいいなら車椅子も置いていいぞ。」
……甘い。
みんな、直接口には出さないけど、僕がもうすぐ死ぬのを知ってる。
だから、こんなに優しい。
「…ありがとう、ございます。」
そう分かってても嬉しくて、やっぱり僕は笑ってしまった。
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