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僕の幸福理論
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結果、車椅子は印刷室の横にある、印刷準備室に置かせてもらえることになった。
予備のコピー用紙などを置いておくはずのそこは物置部屋と化していて、車椅子か置かれてもさして違和感はなかった。
さらに、印刷準備室は比較的教室に近く、使う体力も最小限に抑えることができた。
多分これも、先生たちの配慮なんだろうなぁ……
なんだか、嬉しいような、でも悔しいような気持ちになった。
車椅子を置いて部屋を出ても、まだ生徒は見当たらない。それを確認してから、僕は手すりにつかまった。
軽く足を引きずりながら、少しずつ進む。無理しようと思えばもっと早く行けるけど、誰もいないならできるだけ無理はしたくない。
少し前なら、惨めだと思ったんだろう。こんなことをしないと普通なふりも出来ないなんて…って。
「でも……今はそう思わない。」
だって知ったんだ。
この世はどうやったって理不尽ばっかりで、心の奥の願いはいつだって叶わないこと。
辛い思いだって数え切れないほどあるだろうし、もうダメだと諦めた人からどんどん落ちていくこと。
その落ちた先で、手を差し伸べてくれる人の存在を。
人はいつだって幸せになる権利があること。
些細なきっかけで、世界が輝いて見えること。
自分を幸せにするのは、いつだって自分自身の意思だということ。
気づけたんだ。
だから。
だから、そのためならどんな辛い道も、乗り越えられると思うんだ。
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