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僕の幸福理論
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みんなが興味津々というように外を見ていた。
俺もチラリと見ると、慌ただしげにストレッチャーを運ぶ救急士が見えた。
でも、特に興味はないしそれに群がる気分でもない。
だから、机に座って突っ伏したまま目を閉じた。
あの声が聞こえるまでは。
「アズマくんっ!!!!!!」
ア ズ マ ?
ちょっと待て。
なんでこのタイミングでその名前が出てくる。
嫌な予感が止まらなくて、急いで窓に駆け寄った。
嘘だ。
ありえる訳が無い。
だってあいつは被害者なんかじゃなくて加害者で、
そんなこと、あるわけないんだ。
でも、ストレッチャーに乗っているのは、紛れもないアズマだった。
全身血だらけで。
まるで眠っているように目を閉じてるのに、
二度と目を覚まさないような気がした。
「え、あれ光山だよな…」
「なんで運ばれてるんだよ。それに、あの血……」
周りの音が聞こえないなんてことはなくて。
嫌でも、これが現実だということがわかった。
………嫌だ。
俺は飛び出したように昇降口に走った。
だって。
待って。
昇降口に辿り着くと、ちょうどアズマが救急車に運び込まれていた。
そのすぐ近くに、泣きながらアズマの名前を呼ぶ男。
保健室の先生だ。
上履きのままだなんて忘れて、そこに走っていった。
でも、途中でその足は止まった。
衝動的に走ってた。
アズマのことばかり考えてた。
なんで?
俺は、アズマに何をしたいんだ?
最低だと、言ったじゃないか。
お前は俺を、裏切ったじゃないか。
お前なんて、許せないんだ。
じゃあなんで、俺は走ってたんだ?
俺に、そんな資格はないだろ。
そもそも、俺が来てもアズマは嬉しくもなんともないんだ。
逆に、迷惑かもしれない。
また言われるかもしれない。
「僕がいなくなってせいせいするでしょ?」って。
……………俺は、行けない。
そうして、アズマとそれに同行する先生をただ呆然と見ていた。
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