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僕の最終通告
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だったら尚更、分かってもらわなきゃ。
「…8月ぐらいにね、急に胸が痛くなって、息ができなくなって、病院に運ばれたんだ。そこで、半年って余命を告げられたんだ。」
ずいぶん昔のことのように思い出す。
まだ暑くて、蝉がやたらと鳴いていたあの頃。
「自分でもなんとなく気づいてたんだ。だから、死ぬまでにもらった幸せを返そうって思ったんだ。」
でも結局、何もできてないよなぁ。
そんなことを思って少し笑いながら、はっきりと告げた。
「嘘なんかじゃないんだ。僕は死ぬ。」
ごめんね、ヒトミ。
病気になんてなっちゃって。
ずっと一緒に生きられなくて。
「…え、嘘…だって、っ…じゃあ、2月にはアズマもう……」
ヒトミ、口が震えてる。
でも、僕には真実をいう義務がある。
「ううん、通学とかで体に負担がかかりすぎちゃってね。来月には、多分…」
それに、飛び降りたことで体にガタが来てる。
どうやったって、1月まではもたない。
ヒトミの手をとる。温かい。
いや、僕の手が冷たいのかな。
「ぅえ、じゃ…飛び降りなんてしたら…おれっ、アズマになんてことっ…!」
ヒトミが泣いた。
そっか、ヒトミは僕が死ぬのなんて望んでないんだ。
自殺なんて、何を考えてたんだろう?
「ヒトミのせいじゃないよ。大丈夫、大丈夫。」
「ごめ、ごめんっ、ごめん、ぅあ…ごめっ…!」
ヒトミが僕を包むように腕を回してきた。
「泣きすぎだよ、ヒトミ。」
そんなこと言いつつ、僕だって泣いていた。
やっと分かりあえた。
それだけのことに、これだけの時間がかかった。
「…ヒトミ、」
「あずっ、アズマぁ…」
だから、もう二度と。
過ちは起こさない。
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