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迫り来る影5
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「はぁ」
無意識に自分の口から漏れた溜息に余計気が重くなる
「流石の蓮も花園君の事になると、普通じゃいられへんのやな」
虎賢が珍しいと呟きながら不思議そうにこっちを見てくる
「茶化すなよ…これでも必死なんだから」
「…確かにめっちゃ頑張っとるさかい花園君も気づいておらんと思う」
「そーだといいんだけど…」
そうなのだ、会長の事になると全然思い通りにいかない
遠くに置こうとする程、会長は近くに寄ってくるし、その度傷ついた顔されて俺が普通でいられるわけが無いのだ
虎賢は俺が会長を避ける度、辛い顔をしているのが分かっているのだろう
もう2週間は会長とまともに接していない
それどころか2人っきりになろうとしている会長を思いっきり避けている
それもこれも、今も学園の外の森の中から望遠鏡を使ってこちらの様子を伺い、時々写真を撮っている大鷲組の組員であろう人間のせいだ
……あ、目が合った
大鷲組は俺の存在を知っている
俺の存在を知っているという事は俺の過去を知っているという事だ
だから望遠鏡越しに目が合っても平然としているのだろう
はぁ…やばいな
「蓮?なんや外なんてじぃーと見おって、やっぱ疲れとるんやないか?」
「……なんでもない、大丈夫だよ」
虎賢には四六時中見張られている事は伝えていないし、写真を撮られている事も説明していない
この様子だと気づいてもいないだろう
てゆーかそれが普通だし…
見張れられている事と写真を撮られている事は義父には報告してあるから問題はないだろう
まぁ俺が何十メールも先の木の上から望遠鏡で覗かれてるなんて虎賢に言えないのが1番の原因なんだけど…
そんな事言ったら俺の目が異常なのがバレちゃうし、耳がちょっと良いのは音楽家とかにいるとして、目が良過ぎるのは遊牧民族などアフリカやモンゴル人の特徴で見られるものであり、日本人にはなかなかいないだろう
と言っても俺の国籍は無国籍なので日本人でもないんだが…
まったく、四六時中飽きもせず良くやるものだと感心しそうな程だ
ずっと警戒していなければならないこっちの身にもなって欲しい
俺はまだいいが、電話の対応をしてくれている虎賢が可哀想だ
パーティーの後に義父に報告して、義父が俺に命令するのは早かった
直ぐに俺に携帯の履歴を見られないようにウイルスで守るよう指示し、少し経ってその携帯も虎賢が出るように俺の携帯を虎賢に預けるように指示して、更に念の為ウイルスが破られても良いように一切のメールと電話をしないように俺に指示して来た
最初は分からなかったが、今なら分かる
大鷲組が欲しがっていて、相泉外務大臣が言っていた『裏にあってこそのものであって表にあってはならないもの』の、者の正体が…
そしてそれを報告した時、何故義父が呆れた顔をしていたのかも
多分あの時義父は何故自分の事なのに気づかないのか呆れていたのだろう
まぁ自分でも馬鹿だったと考える所がない事もないが…
いやでもあんな、なぞなぞみたいな会話からものの正体を考え出すのは無理がある気がするし、最初から自分が狙われている!なんて考えるのは自意識過剰ではないだろうか?
そう考えれば俺の頭は至って正常だった訳なのだが、自分が狙われている事に気づかなければ対応が遅れていたから、威張って言える立場ではないんだが…
兎に角、義父のおかげで対応が速やかに行われたので俺の周りに被害は出ていない
このまま被害が出る前になんとか決着をつけなければならない
それまでの辛抱だと自分に言い聞かせながら生徒会室のドアを開けた
ドアを開けると桜井さんがいて、会長が桜井さんに微笑みかけていた
……近いし、仲よさそう
自分から避けておいて会長が自分以外の誰かに微笑んでいる事にドス黒い感情が溢れる
その事に自己嫌悪するが、ドス黒い感情は止まりそうにない
……仕方がない状況とは言え、自分から避けといて何嫉妬してんだよ
馬鹿だろ…分かってて覚悟までしてた筈なのに
せめてこのドス黒い感情を会長達に気づかれないように顔に笑顔を貼り付けて、努めて明るい声で話しかけた
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