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帰り道、巫女はペラペラと他愛の無い事を楽しそうに話している。無口な方じゃねぇけど、こんな喋ってんのも珍しく、無理をしているのだろう思う。
近頃、駅や道すがらで小野寺と遭遇する事が多く、帰り道が同じだからと3人で帰る事が増えて、今日も一緒に帰っている。
正直、俺は邪魔だと思っているが、事を知らない小野寺と話してて、巫女の気が紛れるのであればと何も言わないでいた。
「 じゃあ、ここでっ!」
「 うん。またねっ。」
最寄り駅に着き帰り道の違う小野寺と別れると、巫女の顔に陰りが差す。それを見つめてると、目が合った瞬間またニコッと笑顔になった。
...ったく、無理しやがって。
そんな巫女の頭をポンっと撫でると、
「...俺しか居ねぇんだから、んな無理すんな。」
言った途端、巫女は顔を泣きそうに歪ませて、俺の胸に額を押し当てるとその胸のうちを明かしてきた。
「....辛いよ正ちゃん...。...もうやだっ、しんどい。」
ブレザーをギュッと握ってそう言う巫女の弱々しい姿に、胸が絞られたように苦しくなる。
少しでも巫女の辛さを和らげてやりたくて誘ってみた。
「 久々に道場行くか!」
「 えっ?...いいの?」
俺の提案に、弾かれた様に仰ぎ見てくる巫女に、ああ。と笑顔で頷くとガバッと抱きついてくる。
「 嬉しいっ!正ちゃん大好きっ!!」
「 ハイハイ。ほら、行くぞ。」
久しぶりに見た巫女の本当の笑顔に、嬉しい反面、複雑な心境だった
...道場ってだけでこれだもんな。ったく、俺の顔見ただけで、こうなれっつーの。
道場に行くとなった途端、先程の悲愴な顔は何処へ行ったのやら、ご機嫌な様子の巫女を見てそう思い、苦笑した。
ガキの頃から何かあると道場へ行きたいと言い出し、柔術に没頭する事で巫女がストレスを発散し、頭をからっぽにして心機一転頑張る事は勿論知ってる。
だから、巫女を道場へ誘ったのだが、自分にも弱音を吐かない巫女に少々不満があった。
もっと頼って欲しいし、弱い部分も曝け出して欲しい。
「 ...俺のライバルは道場だな」
「 ん?なにそれ?変な正ちゃんっ!早く行こっ!」
グイグイ手を引く巫女にハイハイと言い笑う。やっぱ巫女はこうじゃねぇと。
道場に着くと、今月柔道大会を控えている事もあり、巫女の相手を出来そうな奴の姿は無くしょんぼりしたその姿を見て立ち上がる。
「 ...しゃーない、俺がやるか。」
「本当に?凄っい嬉しい~!着替えよっと!」
一層笑顔になった巫女を見ると嬉しくなる。一緒に組み手すんのはクリスマス以来だ。ふと、あの日の巫女を思い出したら、背筋がぞくっとした。
...今日は平気...だよな?
笑ってる巫女を見れて嬉しいけど、組み手の相手を申し出た事は失敗だったかなと少し後悔した。
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