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朝、いつも通り神社で掃除をしていると、石段を上がって来る者の姿が見えた。
僕は少し緊張気味に竹箒をギュッと握りそちらを見つめる。学校での一件もあり、少し過敏になっていたが、上がって来た人の顔を見て安堵して
フゥと息を抜く。
「...なんだ琥太ちゃんか。おはよ。どうしたの?」
「 ...なんだとはなんだ。正太郎が自分の代わりに神社行けとよぉ~。」
その言葉に疑問が湧く。
「 正ちゃん具合でも悪いの?」
「頭は悪りぃけど具合は悪く無い。なんかやる事あっから先行くって言っとけってよ~浮気じゃね?」
ニヤニヤ笑いながら言う琥太ちゃんの言葉に僕は焦りを感じた。勿論、浮気だなどとは露程も思わない。恐らく嫌がらせの犯人を割り出そうと、こんな早くから学校に向かったのだろうと思う。
...昨日の今日で万が一正ちゃんと小野寺くんが鉢合わせしちゃったら大変な事になっちゃう、
昨日の噂の件で、正ちゃんの気が立っていた。一触即発しそうな正ちゃんが、小野寺くんが犯人だと知れば何をしでかすか分からない。
「 お願い、琥太ちゃんっ、掃除しといてっ!」
「 えっ!? おいこら、巫女都っ!! えー、凄げぇやだ...」
琥太ちゃんに竹箒を押し付けると母屋に着替えに行き、バババッと着替えると鞄片手に駆け出した。
神社の境内を走ると、竹箒を適当に振り回す琥太ちゃんの姿が見えて、
「琥太ちゃん、玉砂利散らばさないっ!!後でママが見に来るからね!行ってきますっ!」
「 後で覚えとけよーっ!!」
恨み言を叫ぶ琥太ちゃんに苦笑しながら学校への道程を急いだ。小野寺くんの事も心配だが、正ちゃんが怒りに任せてなにをするか危惧している。
夏の時のように暴力に訴え出れば、学校という場所柄理由が理由でも正ちゃんも無罪放免とはいかないだろう。
...小野寺くん、お願いだから今日だけは僕のクラスに入んないでっ!
祈るような気持ちで歩みを進めた。
学校に着くと下駄箱が悲惨な事になっていて、小野寺くんが来ている事がそれで分かった。正ちゃんと鉢合わせているのではと思うと心臓が激しく脈打つ。
...正ちゃんっお願いっ、手出さないでっ!神様っ!
縋るような気持ちで教室に向かうと、正ちゃんの怒声が聞こえて来て遅かったと思った。バンッ!とドアを開けると叫んだ。
「 正ちゃん、だめーっ!!」
「 するかっ!!ボケっ!!」
二人の声が被さると同時に、ドゴンっと鈍い音を響かせて正太郎が駿に頭突きを喰らわせた。
「 あっ!?小野寺くん大丈夫っ!?」
僕が慌てて小野寺くんに駆け寄ると正ちゃんがそれを制す。
「巫女、心配なんかすんな。...こいつが...犯人だ。」
悲痛な顔で言い難そうに言う正ちゃんに、
「.......知ってる。でも手、出したらダメ!」
そう言いながら小野寺を庇う様に立つ巫女を俺は眼を見開いて見つめる。
「 ...いつから知ってたんだよ?」
「...昨日。...屋上下のトイレで会ったの。黙っててごめんね...。」
...あの時か。だから下手な嘘吐いたんだな。
「 なんで言わなかったんだよ。」
正ちゃんの問いに僕は言葉を直ぐには紡げなかった。自分の憶測だけで小野寺くんが正ちゃんを好きだと思っている。だからこそ正ちゃんに嫌われる決定打になると思って、昨日も言わなかった。
ここで小野寺くんの気持ちを暴いたとしてもしなかったとしても、結果としてはもう同じかもしれない。けど確証も得られず、況してや他人の気持ちを無闇に告げるのは、やはり違うと思った。
「 ...ごめん。理由は...言えない。」
この選択で正ちゃんを怒らせる事になるかもしれない。罰は甘んじて受けるつもりでいる。だから自分の信念は絶対に曲げない。正ちゃんならきっと分かってくれる。
真っ直ぐ見つめる巫女の眼が俺に語ってる。
その眼は不安げに揺れながらも強い意思が宿っていた。
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