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巫女のその眼に揺るぎ無い芯の強さを感じた。
とに巫女はお優しいこった...。惚れてまうやろぉ~、いや違げぇな、惚れ直してまうやろぉ~、だな。
そう思い、場違いに笑いそうになった俺は、咳払いをして気を引き締め直す。
「 ...どうせコイツの気持ちを察して言えねぇんだろ?巫女は甘めぇんだよっ!コイツのした事は許せるような事じゃねぇだろがっ!!」
...正ちゃん知ってるんだ。
その言葉に小野寺くんが気持ちを伝えたのだと知る。正ちゃんの言う通り、こうやって何度も何度も危ないめに遭うのはきっとこの甘さのせいかもしれない。
それでも小野寺くんを憎いと思えないのは、同じ人を好きになったからだと思う。僕と同じように、正ちゃんの言葉に一喜一憂していた小野寺くんを思い出すと、言われたら辛い言葉や気持ちまで分かる気がした。
「 正ちゃんの言う通りだと思う。だけどもういいの。理由が分かったから、もういい。もう正ちゃんは何も言わないであげて?」
苦笑気味にいう巫女都の言葉を聞いた駿が狂った様に笑いだす。
「 なんですかそれ?お情け掛けて優越感に浸ってるんですかぁ?あんたみたいな偽善者ムカつくんだよっ!!」
「 この野郎っ!!」
カッとなった正ちゃんが、再び小野寺くんに掴み掛かるのを僕は抱きつく形で止めていた。
身体も大きく力も強い正ちゃんを小柄な僕が止めるには全身を使わなければならない。けど、小野寺くんにはそうは思われなかった。
「 態々見せつけて、人の気持ち逆撫でするなんて...、本当に嫌な奴っ!! その可愛い顔で色んな人にチヤホヤされてるんだから、佐倉先輩ぐらい俺に頂戴よっ!!俺には佐倉先輩しかいないんだよっ!!」
悲痛な叫びだった。小野寺くんの感情が流れ込んで来るようで僕は苦しくなる。
...でも、ちゃんと伝えなきゃ、
「正ちゃんだけは渡せない。他は要らないから。僕にも、正ちゃんしか居ないんだ。」
震える手をギュッと握りめて、小野寺くんの眼を真っ直ぐ見て言った。妄信的に正ちゃんを想う小野寺くんには残酷な言葉かも知れない。それでも自分の気持ちをハッキリと伝える。
その途端、わなわな震えた小野寺くんが、僕に体当たりしてきた。
「 わっ!? .....くっ、」
小野寺くんは、倒れた僕の上に馬乗りになると首をグッと締めてきた。
「 アンタなんか居なくなればいいんだっ!!」
こんなにも、誰かに憎悪に満ちた眼を向けられたことは今まで無かったなと僕はどこかボンヤリと思っていた。首を絞める小野寺くんのその力に、憎悪の大きさが伝わってくる。
「 てめぇ!!離せっ!!」
巫女の首を絞める小野寺を見て、俺は慌てて引き離そうとその腕を掴む。けど、この小柄な身体の何処にその力が、と思う程の力で巫女の首を絞める小野寺にゾッとする。焦燥を感じながらグッと力を入れて引き離した。
「 巫女、大丈夫かっ!?」
....アイツ放っといたら、巫女が危ねぇ。
ゲホゲホと咳き込む巫女を抱え起こすと、眼ぇ瞑ってろと指示をした。弾かれたように不安な顔をしながら、「 手、出しちゃダメ!」と言う巫女に大丈夫だと微笑むと、意を決して小野寺に声を掛けた。
「 ...さっきおめぇが言ってた事、まだ活きてっか?」
「シテくれるんですかっ?」
俺が言った途端、眼を輝かせてそう聞く小野寺に反吐が出そうだった。けれど巫女の首を絞める小野寺の常軌を逸した行動を見て、他に手段が思い付かない以上巫女を守る為にはこうするしか無い。
勿論側に居て守るつもりでいる。それでも万が一を考えたらキスぐらいで巫女の安全が保証されるのであれば安いもんだ。
「その代わり約束はちゃんと守れ。金輪際、巫女に手ぇだすな。」
正太郎と駿のやり取りを巫女都は不安げに見ていた。
...さっき言った事ってなに?正ちゃんなにするの?
話の内容がさっぱり分からない。けれど正ちゃんの顔からしていい予感はしない。自分の身の安全と引き換えに正ちゃんが何をするのか。僕は居ても立ってもいられなくなり聞く。
「...正ちゃんなにするの?」
「いいから眼ぇ瞑ってろっ!!...良いって言うまでぜってぇ開けんなっ!!」
教えてと縋って聞いても、何も言わない正ちゃんに僕の焦燥は募った。
そんな2人の様子を見ていた駿はニヤリと意味深な笑みを浮かべる。
「キスしてくれるんですよ、俺に!眼なんか瞑らないでしっかり見てて下さいよ!」
「 ..........てめぇ、」
小野寺くんの言葉に僕は血の気が引いた気がした。悔しそうに顔を歪めた正ちゃんを見つめ思う。
...僕の為に小野寺くんとキスする気なんだ。
そんな事は絶対させないと僕の中で確固たる決意が固まった。
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