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巫女都は現在、途轍もなく憂鬱な気分で歩いている。
「ふぇ~ん、正ちゃんやっぱ学校、休みたい~っ!」
「 ダメに決まってんだろ!ほら、歩けっ!」
僕の願い虚しく、本日は快晴なり。
今日、僕たちの学校では球技大会が行われる。
種目はサッカー。各クラス一丸となって優勝賞品を狙いに行く。
各クラスで公正公平になるように選手をくじ引きで決める事になっているが、1、2年は免れたこのくじ引きで、今年はまんまと当たりくじを引き、選手に選ばれてしまった。
こんなものに選ばれて僕は物凄く困った。
何故なら、球技が大の苦手だから。
球技も然る事ながら、走る事も苦手な僕はサッカーなど以ての外だ。
それなのに、当たりくじを引き当てたあの瞬間、神様に見放された気がした。
学校が近付くにつれ、気分は落ちに落ちていく。
...胃が痛い。
「...正ちゃん、お腹痛いから帰りたい。」
「 どうせ痛いのは胃だろ。巫女が休んだら、選手交代認められてねぇんだから、人数減って不利になんだろが。」
...バレてる。
「 ...人数減っても僕が居ない方が邪魔にならない分良いよ。」
「...じゃ、邪魔になんねぇようにすりゃ良いんじゃね?」
簡単に言う正ちゃん。僕だってなりたくてなってる訳ではない。
「 ...正ちゃん、僕の分まで頑張ってね!...じゃ。」
「 待てぇい!! そうは問屋が卸さねぇ!諦めて行くぞ!!」
踵を返した僕をあっという間に捕まえた正ちゃんは、普段は絶対にしてくれないのに、僕を抱き抱えて歩き出す。
「ふぇ~ん!降ろしてよぉ~行きたくないーっ!!」
「 ダアッ!! 暴れるなっ!!」
学校までの道のりをギャアギャア騒ぎながら進む巫女都と正太郎はかなり目立っていた。
「おう!つかラブラブだな!姫抱きで登校なんて、巫女ちゃん足腰立たなくなっちゃったの?」
...そうか、その手があった!!
教室に入った途端、ニヤニヤと言う智くん。
普段なら赤面必至だが、今の僕は退路を見出だせた気がした。
やるしかないっ!!
サッカーが嫌すぎた僕は羞恥も感じる事無く、ここが教室だという事もお構い無しに正ちゃんの首にスルリと腕を回し、鼻と鼻を擦り合わせながら囁いた。
「...正ちゃん、今すぐ帰ってえっちシタい。」
「 なにっ!!? 」
大胆な巫女にクラスの野郎共が前屈みになってる。勿論俺の小太郎も臨戦態勢を完璧に調えていた。
巫女からんな事言うなんて是が非でも!シャア帰ろ~。.......いや待てよ、
俺は足りない頭で考えた。何を隠そうこの俺は、球技大会の当たりくじを三年連続引いている、ラッキーボーイだ。
運動しか活躍できる場の無い俺は、今日は一年の中でも数少ないクラスの期待の星になっている。
ここで万が一巫女と二人で帰ったら、うちのクラスは必然的に9人で試合に挑まなくちゃならなくなり、非難の的になるだろう。
...ダメだ、帰れねぇ。
「...巫女、今はシテやれねぇ。球技大会終わって帰ったらタップリしてやっから、それまで我慢してくれ!」
「えーっ!!それじゃ全っ然、意味がないーっ!!今!今がいいのぉーっ!!」
..........意味がない?
「 何企んでやがるんだ?」
巫女の言葉に疑問を覚えた俺が訝しげな顔で尋ねると、巫女はスーッと顔を背けた。
「......何にも企んでない。今すぐシタいだけ...。」
抑揚もへったくれも無く、棒読みでそう言った巫女は俺と眼を合わせようとしない。
...一体何なんだ?ハッ!?まさか球技大会が嫌すぎてか!?
意図に気づいた賢い俺は、巫女を降ろすとその頬をつねった。
「 おい巫女、おまえ謀ったな?」
「 痛ぁ~い!! だってぇ~」
「 だってじゃねぇ!!帰ったら説教くれてやるっ!!」
「 えーっ!! やだやだっ!!ふぇ~んっ!!」
2人のやり取りを見ていた智は内心思っていた。
...あんなあからさまな色仕掛けで騙せると思った巫女ちゃんも凄げぇけど、あれに引っ掛かる正太郎もある意味凄げぇな...。
何にせよこの二人は、天然と馬鹿の最強カップルだ。
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