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「 美味しい美味しいリンゴだよぉ~?ほらぁ、おあがりぃ?」
「.........ぷっ!ふふふっ」
時間の関係上お妃姿のまま老婆の演技をする正ちゃんの姿に、僕は堪えきれずに口に手を当てて笑う。
「...ちゃんとやれや。」
「 ごめんっ、でも可笑しくって、」
ううん!と咳払いをし、気を取り直してリンゴをかじると、そのまま倒れた。
...なんつー、無防備。パンツ丸見えじゃねぇか!!
開き直ったのか慣れたのか、巫女はパンツが見えてても気に止めていない。
見せられてるこっちはちっとも慣れなくて、まるで苦行だ。
帰ったらパンツの中まで根こそぎ見てやる!!
俺がそう思ってる最中、横では巫女がかじったリンゴの争奪戦が行われていて、奪い取った奴がそのリンゴにかじりつくのを尻目に見て思う。
バカめ!その歯形は俺んだよ!!
棺に入った巫女を取り囲んで泣いている小人役の7人の中で、獅童だけが何やらブツブツ言っているのを、俺は訝しげに見つめた。
僕の顔の横で獅童くんが呪文のように正ちゃんと別れろと言っている。
別れないもん!!
言い返したいが残念ながら今は死人だから心の中で思うだけに留める。
「.....どうしたんだい?」
王子様役の赤城くんの声が聞こえて、緊張が走る。
「......なんと美しい。」
言いながら髪に触れてくる赤城くん。
第8項に引っ掛かってると騒ぎ立ててる正ちゃんの声が聞こえるが、田中くんはなにも言わない。
スッと僕の手が取られ、その手の甲にチュッと唇が押し当てられた。
ヒイッ!? うぅぅっ....。
手を握られたまま、閉じた瞼の上に影が出来て、赤城くんが間近に迫ってると思った僕は、パチッと眼を開けて握られてる手と反対の手で思わず自分の唇を覆う。
「 桐谷くん!」
途端に田中くんの咎める声が聞こえてきて、僕がそちらを一瞥すると、正ちゃんは背を向けてこちら側を見ないようにしていた。
劇とは言え、僕が他の人とキスする所を見たく無いのだろうと思うと胸が苦しくなる。
「.....お願いっ、唇に触れないで、」
赤城くんにしか聞こえない、小さな声で懇願して眼を閉じると唇が近付いてくる。恐らく後、数ミリというくらいの側で止まった唇がゆっくりと離れていった。
...僕の頼み、聞いてくれたんだ。
ホッとしながら瞼をあけると、眼に映った赤城くんがフッと笑った。
「....ありがと。」
「 どういたしまして。」
抱き起こされて、囁くようにお礼を言うと同じトーンで返答する赤城くん。するとパチパチ拍手の音が聞こえてきて、そちらを向くと田中くんが満面の笑みを浮かべていた。
「 素晴らしい!とても良いキスシーンでした!」
角度からか、ほんの数ミリの距離だったからか、ちゃんとキスしていたように見えたみたいで、田中くんは満足そうだ。
「 今日はここまでにしましょう。」と田中くんの号令で解散となった。
「 わっ!? 正ちゃん!?」
その途端、正ちゃんが僕の手を引いてぐんぐん歩き出し、近場の教室に入ると貪るようにキスをしてきた。
「........んっ、...」
唇の表面を舐めとり舌を絡ませてくる正ちゃんは、明らかにイライラしてる。
...そっか、正ちゃん僕が赤城くんとキスしたと思ってるんだ。
そう気付いた僕は正ちゃんの好きにさせた。
「...ちくしょう。」そう呟いて離れた正ちゃんの首に腕を回して僕は微笑んだ。
「 してないよ。赤城くんとキス、してない。」
「...マジ、で?」
「 うん、マジで!赤城くんに頼んだら、フリだけにしてくれた!」
心底安堵した顔をした正ちゃんを見て、僕は愛されてるなぁと思って嬉しくなった。
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