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職員室に呼ばれた正ちゃんを置いて、僕は1人で稽古に来た。
「 あれ?今日は1人なんですか?」
そう話し掛けてきた赤城くんに苦笑しながら答える。
「...うん。正ちゃん職員室に呼ばれちゃって...。」
「 そうなんですか。...あの、先日は可愛くないなんて言ってすいません。あんな啖呵切って面倒ごとに巻き込んで...。」
真摯に謝る赤城くんに、僕は慌てる。
「 謝らないでっ!正ちゃんが言い出したんだから、赤城くんが悪いんじゃ無いよ!こっちこそごめんねっ、」
「 佐倉先輩の事で桐谷先輩が謝るのおかしくないですか?」
「 え? それもそうだねぇ!」
僕と赤城くんは顔を見合わせて吹き出した。
あの時は険悪な感じになっちゃたけど、こうして話してみると人懐っこくて話しやすい赤城くんとすっかり話し込んでいた。
「 コンテストで踊ってたやつ、なんていうんですか?」
「 あれは、巫女神楽。祈祷や奉納の為に巫女が舞うんだけど、回って穢れを祓って半回転すると神が降りるって言われてるの。」
僕の説明に「 へぇ~。」と頷いた赤城くんが、習ってるのかと聞いてきて、それに首をフルフル振ると、家が神社なのだと伝えた。
「 じゃあ納得。上手いはずですね。」
「 ふふ、ありがと。」
「 家は代々医者なんです。俺は落ちこぼれで、出来の良い兄と比べられてうんざりです。」
苦笑して言う赤城くん。僕は迷わず家業を継ぐべく神職者になる事を選んだけど、家業が医者となるとその選択は殊の外難しいだろう。況してや兄弟と比べられるというのは大変だと思う。
「 赤城くんは優しくて良い子だよ。」
僕がにっこり笑って言うと、赤城くんは僕をジッと見つめてきた。
...なんだろ?上から目線で言ったから気を悪くしちゃったかな?
僕がそう思い不安になっていると田中くんに呼ばれてしまい、ごめんね!と一言謝ってその場を後にした。
棺に収まり眼を閉じて死人を演じているが、獅童くんが立て続けにダメ出しされて全く進まない。
「 獅童くん、そんなに難しいセリフじゃ無いですよ?おお、美しい白雪姫が死んでしまったです。さぁどうぞ。」
「 難しい難くないじゃ無くて、口が裂けてもそんな事は言いたく無いの!」
...あ、なんかデジャブ。
獅童くんの言葉にそう思ったけど、良く良く考えれば1年前にも言われたなと思い出す。
田中くんのダメ出しが延々続く中、獅童くんは頑なに美しいという言葉を濁すので、いたちごっことなりそのうち僕は眠ってしまった。
「...明日までには言えるようにしてきて下さい。進まないので赤城くんと桐谷くんのキスシーンに移って下さい。」
田中の言葉を勿論巫女都は聞いていない。死体役なのを良いことに、狭い棺の中で熟睡中だが誰もその事には気づいてなかった。
「...なんと美しい。」
赤城がセリフを言いながら手を取り頬を撫でるも、巫女都は全く起きない。
...桐谷先輩、...寝てる?
赤城はスースー寝息を立てる巫女都を見て眠っている事に気付き、その唇に触れ誰にも分からないようそっとカバーを外した。
その無垢な寝顔に罪悪感を覚え、暫し考えを巡らせたが起きる気配の無い巫女都の赤い唇を見て、どうにも止められない衝動に駆られる。
...今なら佐倉先輩も居ない。
幸か不幸か正太郎も居らず、周りの人間が見ているとはいえ、いつも通りフリをしたと言えば巫女都は信じるような気がする。
そう思い、頭の中で詫びながら赤城は顔を近づけていった。
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