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俺は部屋で1人眠れずにいる。
授業中寝てるとは言え、連日寝不足が続いてるし、身体も疲れてるにも関わらず、眼を閉じるとあの光景が鮮明に浮かび上がる。
...くそっ!!
バッと身体を翻し、いつも巫女が寝てる右隣を向く。1人なんだから広々と真ん中で寝りぁいいものを、律儀に隣を開けておくのはこの一年で染み付いた習慣だ。
...ダメだ寝れねぇ。
ベッドから起き上がり時計を一瞥すると、12時半を回ってる。
巫女の家は朝が早い。家も親父が鳶職だから、親父とお袋は起きるのが早いが俺には関係無い。
リビングに降りて鍵を取る。お袋とおばちゃんで何か有った時の為にとお互いの家の鍵を渡し合っていて、今までなにかなど起こった事はねぇから結局俺と巫女がお互いの家の行き来に使ってる。
...寝てんだろうな。
そう思いながら神社の境内を進み、母屋に着くと俺は鍵を開けて中に入った。
玄関の鍵を施錠してたら声を掛けられてビクッとなる。
「 お帰り。巫女都もう寝てるわよ?...今日くらいは寝かして上げなさいよ!」
「.......へーい。」
遅い時間にも関わらず、小言を言いながらもお帰りと迎え入れてくれるおばちゃんは「なんか飲む?」と聞いてくれるが、俺はそれに首を振った。
「 あっそ。じゃあおやすみ。」
「 うん。」
短いやり取りでおばちゃんと別れた俺は、巫女の部屋へ向かう。中に入ると、ベッドでスゥスゥ眠る巫女の寝顔を暫し見つめた。
薄く開いたぷっくりとした唇を撫でていると、俺しか知らなかったはずのこの唇に、他の奴が触れたのだと思って眉間にシワがよる。正直、結構ショックだった。
巫女が同意した訳じゃないし、況してやされた事にも気付いてない。
以前、さなにキスをされた時はたかがキスと高をくくってた。けど、巫女がされるのを見てそうじゃなかった事に気付いた。
たかがキス。されどキスだ。
誰にも触れて欲しく無かったし、俺以外に触れさせたく無かった。
巫女は俺しか知らない。そんな巫女がもし、それを切っ掛けに他の奴に眼を向けたらと思うと言い知れぬ恐怖を感じる。
巫女に赤城との事を言わないのは、聞いたらショックだろうと思っての事もあったが、なによりその事を知って、巫女が赤城を意識するかも知れないと思うと怖かったからだ。
「...頼むからずっと側に居てくれよ。」
塗り替えるように、何も無かったかのように俺は巫女の唇に唇を重ねた。
「.......ん、....」
息ぐるしかったのか、ウザったかったのか巫女が身動いで背を向ける。その髪を撫でて隣に入ると、コチラを向かせて抱き締めた。
身体をグッと動かされた感覚で僕は少し眼を開ける。僕をギュッと抱き締めて閉じ込める胸板と匂いで、それが正ちゃんだと分かり抱き返して眼を閉じる。
「.......正ちゃん、どうしたの...、」
半分寝たまま聞くと、少し離れた正ちゃんが「 悪りぃ、起こしたか?」と聞いてくる。それに薄く眼を開けて微笑むと首を振った。
「...寂しくなっちゃった?」
「.......かもな。」
クスクス笑いながら聞いたら正ちゃんは苦笑いでそう答える。その声が少し元気がないし、素直に認める正ちゃんがなんだか弱々しく感じた僕は、ちょっと身体を摺り上げて正ちゃんの顔の前に胸が来るようにする。
「...おいで。特別だよ?」
グッと俺を引き寄せてそう言う巫女の胸に、素直に顔を埋めて抱き締めると、巫女が俺の髪を撫でる。
いつもと逆のその体勢に苦笑するも、その華奢な身体に抱き込まれている事に途轍も無く安堵を覚えた。
...特別、か。
さっきまでの焦燥感が嘘みたいに消えていく。
「...好きだ。」
「 ふふ、知ってる。」
いつもとは逆の受け答えを笑いながらする巫女に、これはきっとわざとだろうと思って俺も小さく笑った。
「...巫女、このまんま寝ていい?」
「 うん。その代わり、明日は正ちゃんがこうしてね。」
そう言った巫女の胸に一層擦り寄った俺は、分かったと一言告げると眼を閉じた。巫女の低めの体温と、髪を撫でる手、一定のリズムで鳴る心音。その全てに安心感を覚えた俺は、あっという間に眠りについた。
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