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獅童は、苦虫を噛み潰したような顔をする正太郎の視線の先を見て、成る程ね。とほくそ笑んだ。
「 じゃあキスシーンに移ります。準備して下さい。」
手を叩きながら言った田中が俺の側に来て「くれぐれも、」と言われ、言葉を被せるように分かってると答えた。
棺の側に立つ赤城をジッと見ると、スッと視線を逸らされる。
...野郎。
昨日の事が脳裏を過りイライラし、棺の中の巫女を見て唇に触れてカバーの有無を確かめた。
「 ちゃんと付けてるよ?」
クスクス笑って言う巫女の髪を撫でる。
「...田中のお許しが出たから触っただけだ。」
そう言って棺から2、3歩下がった。
分かってんだろうな!
赤城を見据えてそう思っていると、気まずそうに軽い会釈をして寄越す。
田中の合図で演技が始まった。
「...なんと美しい。」
巫女の手を握り頬に手を添える赤城を見て、苛立ちが増す。眼を背けたくなるような光景だけど、万が一を考えると瞬きするのさえ惜しい。
一昨日までの練習では、唇からほんの数ミリまでは近づいていた赤城が、今日は数センチ離れた所で止まる。
田中も昨日の事があったからか、俺の顔を一瞥して何も言わず、赤城が巫女から離れると、俺は漸くホッと息を吐いた。
「 ちゃんとやってよ。」
途端に響き渡った獅童の声に俺も他の奴等も獅童を見る。
「 何で今のNGじゃないの?僕だけダメ出しされて不公平じゃん。昨日みたいにちゃんとやってよ、赤城?」
「 獅童っ!!」
正ちゃんの怒鳴り声を聞いて僕は棺から身体を起こした。キョトンとした僕を見てふっと笑った獅童くんが、正ちゃんの制止を無視して話し出す。
「 昨日はちゃんとやってたじゃん。口紅が付いちゃうくらい濃厚なキスシーン。」
「 えっ!?なにっ!?」
獅童くんが話し始めた途端、赤城くんが僕の耳を両手で塞ぎ、ビックリしてそのまま振り返ると赤城くんはなぜか痛々しい顔をしてる。
「....あの、なに?」
赤城に訝しげに聞いてる巫女を見て、俺は物凄く安堵した。
「 おい、そのまま押さえてろ!!」
「 ねぇ、なに?正ちゃん、なんなの?」
耳を塞がれてても聞こえた正ちゃんの指示に、僕はなにが起きているのかが分からなくて不安になる。
周りのみんなを見ると、気まずそうに僕から視線を逸らすし、理由が分からない。
...僕が関係してる事?
そう思うと途轍もなく不安になった。
「 ...赤城くん、離して?」
赤城くんに頼むも離しては貰えず、正ちゃんに向き直る。
「 ねぇ正ちゃん、教えて!」
不安気に言う巫女を見て俺が迷わってると、「教えて欲しいってよ?」微笑を浮かべて言う獅童に、うるせぇと返すと田中に聞いた。
「...悪りぃんだけど、巫女と帰っていいか?」
「 どうぞ。大方仕上がってますから。」
田中に礼を言うと巫女の所へ行った。
「 巫女、帰ろ。...帰ったら、...ちゃんと話す。」
そうは言ったものの、不安気に揺れる巫女の瞳を見て、物凄く気が重かった。
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