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大なり、小なり、差し引きイコール
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恋人が風邪をひくと、俺が家事をする。
しかし、俺が家事をしていると、なんというか『悲惨』とか、『壊滅的』とか、そういう言葉が頭の中で踊りまくる。メシはまずいし掃除は下手だし、洗濯物はなんでだか、軒並み全部クシャクシャになる。
これは、俺がいかに普段家事をしていないかということの見事な証明だな、と思って俺がしょげてると、恋人が、風邪ひいてて具合が悪いっていうのに、ニコニコ笑いながら、いろんなこと全部やってくれて本当にありがとう、ってうれしそうに言ってくれる。お世辞とかそういうんじゃなくて、本当にうれしそうに心から言ってる恋人の顔を見てたら、俺の心はなんだか罪悪感でいっぱいになってくる。
俺、全部、全然うまくできなかった、って俺が弱音を吐くと、恋人は、ケホケホせきこみながらそっと腕を伸ばして俺の頭をなでて、そんなことないよ、君はどれも、本当によくやってくれたよ、って言った。
おまえは俺を甘やかしすぎる、って俺が言ったら、恋人はおかしそうな顔をして、甘やかすも何も、君がいてくれなければ、君がいろんなことを一人でしてくれなければ、御飯は何もできていなかっただろうし部屋は散らかったままだったろうし、洗濯物だって、干される以前に洗濯機の中にすら入っていなかったと思うよ。だから、私が君に感謝するのは当然のことなんだよ、って言った。
でも、メシがまずい、って俺が言ったら、恋人は俺がなんとかかんとかつくった卵入りのおかゆをモムモム食べながら、君は健康な体だから、こういうおかゆのような病人食が口にあわなかっただけじゃないかなあ? って言った。
掃除が下手だ、って俺が言ったら、恋人は、私が散らかした分まで片付けてくれたんだから十分すぎるよ、って言った。
おまえは俺を褒めすぎるし、過大評価しすぎる、って俺が言ったら、恋人はクニャッと笑って、私は、君が自分に厳しすぎるし自分を過小評価しすぎていると思うけどなあ、って言った。
おまえがそうやって甘やかすから、俺は自分で自分に厳しくしなきゃいけねえんだよ、って言ったら、恋人は、君がそうやって自分に厳しく当たりすぎるから、私はついつい君を甘やかしたくなるんだよ、って言った。
うまく反論できなくなった俺が、もう寝ろ、って恋人を寝かしつけたら、恋人は、ほら、君だってそうやって、いつも私を甘やかすじゃないか、ってうれしそうに笑った。
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