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たぶん、仕事。『ゆきの誕生日編2』 【ほのぼの】
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帰り際に立花さんに電話をした。
いいから明日な、という言葉と、いつものくすくす笑いで、立花さんの真意は掴めなかった。
「みぃ?」
晩御飯も終わり、録画していたバラエティを幸也と見ていた。
「あっ、えっ?」
ソファーに座る幸也の足の間に挟まり、床に座っている僕は、声に顔を上げる。
視線の先の幸也は、少し心配そうな顔をしていた。
いつも爆笑するようなシーンで、一切の反応を示さない僕。
不審に思った幸也が、心配そうな声で問う。
「…なにか心配事ですか?」
「あ、ううん。違うよ」
僕は、幸也の足の上で、ゆっくりとかぶりを振る。
「ごめんね。明日、仕事になってしまって……」
そう言って、幸也は少し淋しそうな表情のまま、僕の頭に両手を添え、額にキスを落とす。
「ううん。僕も…仕事、だし」
僕は幸也の手から逃れ、視線をテレビへと向けた。
明日、立花さんと出かける。
でも、これは浮気じゃない。
たぶん、仕事。そう、これは仕事なんだよ。
自分に言い聞かせるように、仕事だと呟いた。
立花さんは会社の先輩で、僕の面倒をよくみてくれる。無下に、断ったりは、できない。
でも、幸也には言いたくなかった。
きっと、幸也は気にするから……。
立花さんと絢乃さんが家に来たときだって、帰った後に、泣きそうな顔をして、『どこにもいかないで』と訴えてきた。
どんなに僕が好きを囁いても、幸也はいつも不安でしかたないんだ。
だって、僕はもともと立花さんに恋をしていたから。
そんな僕を知っている幸也は、何年経っても、どんなに時間が経過しても、いつか僕の気持ちが心変わりするんじゃないかって不安でしかたないんだ。
ごめんね、ゆき。
過去は変えられないから……。
不安にさせてばかりで…ごめん。
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