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お揃いのネクタイ『ゆきの誕生日編14(完結)』 【ほのぼの】
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痛む腰をおして、シャワーを浴び、玄関に捨て置いていた紙袋を拾い上げ、リビングに戻る。
先にリビングに戻っていた幸也は、部屋着のラフな格好でソファーにぐったりと座り込んでいた。
そろりと幸也の隣に腰を下ろす。紙袋の中からラッピングされたプレゼントを取り出した。
「ちょっと早いんだけど……誕生日おめでとう」
にこりと笑んで、幸也にプレゼントを差し出した。幸也は、驚いたように僕を凝視する。
「明日、誕生日でしょ? 幸也の誕生日プレゼントを立花さんと絢乃さんと僕で買いに行く計画だったみたい」
話ながら僕は、視線を紙袋に戻し、がさごそと漁る。
「最初、立花さんが『テル像くんで待ち合わせ』なんて言うから、デートに誘われたのかと思って……」
幸也の冷たい視線が僕の横顔に刺さる。
「なんで……話してくれなかったんですか?」
少し冷たい幸也の声。
「ごめんなさい。でも、言ったら幸也、心配するでしょ?」
そうっと上げた視線の先、はぁっと幸也のため息が降ってきた。
「そうですね。嫉妬深いですからね……俺」
髪を掻き上げ、そのまま項垂れる。
「いや、浮気とかするつもりないよ。僕はゆきだけだよ?」
慌てる僕。幸也は顔を上げ、にこりと笑む。
「そうですね。あんなに酷く抱いたのに、好きって……」
幸也は、少し悲しそうに笑みながら、愛おしそうに僕の頭を撫ぜた。
「僕はゆきから離れてなんて行かないよ。ゆきが居ない人生なんてありえないから」
どんなことをされても。
どんなに突き放されても。
僕はきっと、幸也を追いかける。
たぶん、幸也の嫉妬心並みに僕の執着心も半端じゃない。
ははっと笑う僕。幸也は僕をぎゅっと抱きしめる。
「俺も。瑞月の居ない人生なんてありえないです……」
僕と幸也の間に挟まっていたプレゼントの袋が、がさっと音を立てた。
「あっ。開けてみて」
言葉に、幸也は腕を緩め、プレゼントの包装を解いた。取り出したネクタイを自分の首に合わせてみせる。
「似合うっ」
僕は満面の笑みで言う。そして、紙袋の中から自分の分を取り出して、自分の首に合わせる。
幸也はそれを見て、瞬間的に驚きの表情を見せた後、ははっと声を立てて笑った。
お揃いのネクタイ。
離れていても、近くに感じたい。
少しでも、数秒たりとも本当は離れたくないんだよ。
ずっと、一緒に居たいんだ……。
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