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赤い光『お正月編2』 【ほのぼの】
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混んでいて自由に動けない境内でなんとか参拝を済ませ、神宮を後にした。
「すごい混み方でしたね」
帰りの電車の中で幸也は苦笑する。電車内もそこそこ混んでいた。扉に寄りかかるように立つ幸也の前に僕が立つ。
去年は2日に初詣に来ていた。今年は2日に幸也の仕事が入り、行けそうにないので本格的に初詣をしようと大晦日に並んだ。
「なんかご利益ありそうだよね」
僕もくすくすと笑う。
「おわっ」
急に電車がガタンと揺れ、幸也の胸元に倒れ込んだ。慌てて立て直そうとする僕に、幸也は腰に手を回し、身体を入れ替えた。扉に寄りかかる形になった僕。幸也は、僕が掴むには少し高い位置にある吊革に手を伸ばす。
幸也は、僕の顔を見ながら、また、ははっと笑った。僕は、声は出さずに、幸也に抗議の視線を向ける。
幸也はにこにこしながら、自分の頬を人差し指で叩く。たぶん、僕の顔がまた赤くなっていると言いたいのだろう。でも、自分で意識して色を変えられる訳じゃない。
僕は少し頬を膨らませた。
幸也は相変わらず、くすくすと笑っていた。
僕たちの家の最寄駅で電車を降りる。
「商店街、行きたいんだけど」
見上げた幸也は、きょとんとした瞳を僕に向けた。
「見たいものがあるんだ。いいでしょ?」
僕の言葉に、幸也は、不思議そうな顔をしながらも頷いた。
家の側の商店街。普段は夜中の12時に消灯してしまうイルミネーションが大みそかから元旦にかけてだけ、ずっと点灯している。
元旦の12時から消されるまでの間だけのジンクス。オレンジ色の電飾の中に1つだけ赤い光があり、それを見つけられたら、愛は永遠となる。
ジンクスを信じている訳じゃない。
でも、僕には、そんな方法でしか幸也に永遠の愛を誓えない。
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