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君だけだから。『バレンタイン編10』 【真面目/ほのぼの】
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「彼女には、俺の恋人は猫の『みぃ』ってことにしています。さすがに彼女にも本当のことは…言えません」
本当は言いたいんだ。俺の恋人はこんなに可愛い素敵な人だと。
でも、それは世間では認めては、もらえない、から。
俺の顔はたぶん、悲痛に歪んでいる。俺は、ゆっくりと瑞月の頭を胸元へ抱き寄せる。
「……でも、俺の恋人は、人間の『みぃ』です。みぃ、だけ……です…」
ごめんね、みぃ。猫だなんて嘘をついて、ごめん。
でも、俺が愛しているのは、君だけだから。
「知ってるよ」
瑞月の腕が俺の脇を通り背中へ回される。ぎゅっと優しく抱き締める。
「ゆきが僕を愛してくれてるの、知ってる。猫でもいいよ。僕は、ゆきのものだから。猫でも人間でも地球外生命体でもなんでもいい。ゆきの恋人で居れるなら、僕は、なんでもいいんだ」
すっと離れた瑞月は、頬を赤く染めながら、俺に穏やかな笑顔を向けた。
「ありがとう、みぃ。愛しています」
「僕も」
はにかむ瑞月の顎に手を掛け、ゆっくりと唇を重ねた。
瑞月がくれたチョコ、白い方を口に含む。ふんわりと香るラムの香り。
瑞月も横で口を開けた。茶色いチョコを手に取り、瑞月の口へと放り込んだ。瞬間、瑞月の顔が微かに歪んだ。
瑞月は、慌てて俺の手からチョコの箱を取り上げる。俺は、きょとんと瑞月を見つめる。
「あ、えっと、ごめん。白いのは絢乃さんの手作りだからおいしいんだけど……茶色いの、失敗…してる」
目で疑問符を浮かべる俺に、瑞月はしゅんと肩を落とした。
「絢乃さんが作ったのは、もっと…おいしかったんだ……」
こんな失敗作じゃ…、と瑞月は、さらに落ち込みを見せた。俺は、瑞月が抱えている箱から茶色のチョコを摘まみ出す。
「あっ、ダメだって……」
瑞月の静止を余所に俺は、そのまま口の中へと放り込んだ。
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