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Ⅰ
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オドランは緑色の瞳が、印象的な少年だった。都会であれば、緑色の瞳を持つ子など大して珍しい事ではないが、オドランの住む地域は人口百人にも満たない田舎町。多くの人が青色の瞳を持つ中、オドランの様な子供は目立ちすぎた。ただでさえ排他的な雰囲気を漂わせる山間のこの町で、オドランは生まれた頃より、あまり歓迎されない存在であった。
そんなオドランが、三歳になったある日の夜、ふいに行方をくらます事となる。両親以外、あまり熱心に探そうとはしなかった。両親も半ば諦めかけた頃、雪の中に倒れているオドランを通りがかりの猟師が発見した。
しかし、それは喜ぶべき事ではなかった。オドランが行方不明となってから、ふた月以上も経っていたのだが、オドランに怪我はなく、それどころか服の汚れなども一切ない状態で発見されたのだ。それが住人たちを恐怖に震撼させた。
オドランが行方不明となったその日は、冥界の扉が開くと信じられていたサウィン祭の日だったせいもあり、よからぬ噂が町中に囁かれ始める。
「ずっと不気味な子だとは思っていたけど、まさか冥界から戻ってくるとは……」
「きっと、魔女に魅入られたんだよ。近づいてはいけないよ」
単なる迷信であり、なんの根拠もないが、住人は皆、そう信じ、オドランを避けた。住民だけでなく、それまで味方であった、両親でさえも。
生還した日以来、オドランは母屋に住む事も許されず、十五年以上もの間、まるで周囲の目を避けるかの様な軟禁生活を強いられていた。
「僕の友達はロナンだけ……ずっと、ロナンとだけ一緒にいられたらいいのに……」
小さな覗き窓から見える眼前に広がる森は、昼でも薄暗く、見つめていると深い闇に吸い込まれて行きそうな錯覚を覚える。むしろ、その錯覚が現実になることを願いながら、オドランは毎日、ため息と共にこの言葉を呟くのだった。今や、唯一の味方である少年の名前を口にする。
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