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Epilogue
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きっと、これが僕の最期の記憶になるのでしょう。
ロナンの冷たい手が僕の首に掛かり、躊躇いながらも、徐々に力が込められて行きました。喉がつまり、咳をしたくても出来ない苦しさが、僕の口からかはかはと変な音を出させます。
顔に血が溜まって行くのがわかり、眼球が飛び出してしまいそうな気がしました。目や鼻、口から水分が漏れ出して来て、ロナンにこんな汚らしい顔を見られるのは嫌だなと思いました。
思わず首にかけられたロナンの手を掻きむしってしまったのは、なにもそう思ったからではありません。頭がぼんやりとして来て、もう考える余裕もなくそうしてしまっただけでした。
いたるところの感覚がなくなってきて、自分の体が痙攣する振動がまるで外部から与えられている様な不思議な感覚でした。
すっかり眼球は上を向いてしまっていたので、ロナンがどんな顔をしていたのかわかりません。
覚えているのは、悲しそうな顔をした後、薄く口元を歪めた事だけです。
苦痛は一瞬の快楽に変わり、まるで闇かに包み込まれる様にじんわりと目の前が真っ暗になっていきました。
僕は死んだのでしょうか。それともこれが、ロナンの言っていた暗く寂しい場所なのでしょうか。
遠くで声が聞こえます。
「ああ……可哀想なオドラン……」
十数年ぶり聞いたのに、すぐにあの女性の声だとわかりました。
「可哀想だと思うのなら、このままにしてやってくれませんか」
続いてロナンの声が聞こえました。なんの事を言っているのかわかりませんでした。
「ああ……可哀想なロナン。可哀想なオドラン。私にはそれが出来ないのです。このまま、オドランの魂を見逃すことは出来ないのです」
その後もロナンが何かを言った様な気がしましたが、僕の記憶はここで終わりです。恐らくこれが、人であった時の最期の記憶。
次に僕が目を覚ましたのは、サウィン祭の夜でした。それまでは暗く寂しい場所で眠っていた様な気がします。
火の灯った家は、暖かそうで入りたかったけれど、入れません。それでも僕は幸せでした。やっぱり、一年に一度しか会えないけれど、ロナンと一緒にいられるから。
もうなんの温度も感じない手を握り、僕たちは再び出会えた事を喜び合うのでした。
繰り返し何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も——
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