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期待 1
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「遥はゴールデンウイークなにすんの?」
大学の食堂で衛とランチをとっていると、衛が突然そう聞いてきた。
「んー…とくに予定はないけど」
あと一週間ほどでゴールデンウイーク。
クラスでも、どこに行くだのなんだので話が盛り上がっていた。
「会わないの?」
誰と、と聞かなくても衛のその嫌そうな顔を見たら、分かってしまう。
それに苦笑いを返しながら、肩を竦める。
「さぁ。わかんない」
会いたいと言うのも、いつも俺から。
時生さんから言われたことはない。
それに。
きっと恋人と過ごすんだろう。
チクッと痛む胸を追い払うように、俺は衛に笑いかけた。
「衛は?どっか行くの?」
「あー、うん。 地元の奴らと旅行いく」
「そっか。どこいくの?」
「ハワイらしい」
「いいなぁ、海外。 楽しんできてね」
土産買ってくる、と衛は笑った。
「ゴールデンウイークかぁ…ほんと何しよ。 バイトもないしなぁ」
ベッドに寝転がってボンヤリと天井を見上げる。
中学生のカテキョのバイトをしてる俺。
ゴールデンウイーク中は家族旅行に出かけるらしく、バイトは入ってない。
実家帰るのもなぁ。
先月帰ったばっかだし。
そのときに高校の奴らとは会ったし、実家だってそんなに遠いわけじゃない。
電車を乗り継いで、二時間ほどで帰れる。
……正直を言えば、大学や高校の奴らから、旅行や単発のバイトの誘いが無かったわけじゃない。
もしかしたら…時生さんとどこかに行けるかもしれない、とほのかな期待を抱いて、友人の誘いに乗ることができなかった。
自分でもバカなんじゃないかって思う。
「会いたいなぁ…」
ゴールデンウイークももちろんだけど、今すぐ会いたい。
時生さんともう二週間ぐらい会ってない。
出会ってからこんなに会えない日が続くのは初めてで、ちょっと悲しい。
何度か電話をしてみたけどそっけなく『無理』って言ってすぐ電話切られたり、電話にすら出てくれなかったり。
机の上に置きっぱなしの携帯をチラリと見る。
3日前に電話をかけたときのことを思い出して、チクッと胸が痛んだ。
聞こえたんだ、電話の向こうから。
『無理だ』って言われたあとすぐに、時生って呼ぶ声が。
そのあとすぐに電話は切れて、耳に流れてくる電子音をしばらく聞いてた。
優しげな、声だった。
恋人と、会ってるんだ。 ただ呆然とそう思った。
……前まではめげずに会えないって言われても、次の日には電話してたのに。
また電話の向こうから声が聞こえたらって思うと、切なくて、苦しくて。
俺は時生さんに電話できずにいる。
「ってゆうか、恋人さんにとったら、俺の存在の方が迷惑だよなぁ……」
恋人の裏切りの片棒を担いでるのは俺で。
俺が時生さんを想って苦しくなったり、恋人に対して嫉妬する資格なんてないのに。
恋人の存在を知ってから何度も、もう諦めようって思った。
苦しい恋はやめようって。
でも、無理だった。
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