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行き場のない気持ち 2
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最後の講義が終わり、衛は今日は家でゆっくりしよーと言いながら帰って行った。
それを見送り中庭のベンチに座って、逸る気持ちを抑えながら鞄から携帯を取り出す。
…よし。
時生さんの番号を出し、通話ボタンを押した。
耳にあてて、呼び出し音が鳴るのを待つ。
だけど、耳に届いたのは。
『お掛けになった番号は現在使われておりません。ご確認の上お掛け直しください』
「…え……?」
機械的な、女性の声。
耳から離して、もう一度同じ操作をする。
そして、耳にあてた。
『お掛けになった番号は現在使われておりません。ご確認の上お掛け直しください』
ーーーなんで。
震える手で、また同じ操作をする。
『お掛けになった番号は現在使われておりません。ご確認の上ーーーー』
流れてくるのは、同じアナウンスばかり。
なんで。
時生さん…?
俺はその場から立ち上がり、走った。
目的地…時生さんのマンションに、向かって。
電車を乗り継いで、走って、着いた先。
階段を駆け上がり、そしてドアの前に着いて。
荒い呼吸を整えるように、大きく息を吸って、吐く。
そして、インターホンを押した。
甲高いベルの音が響き、じっと待つ。
だけど、ドアは閉じられたまま、物音はひとつもしない。
俺は震える指先で、もう一度、押した。
だけど結果は同じで。
ーーー携帯を変えただけ。教えるのを忘れてるだけ。今出掛けてて、家に居ないだけ。待ってたら、きっと帰ってくるーー。
ドアもたれかかり、心でそう唱え続ける。
だけど、一時間経っても二時間経っても帰ってこない。
いつしか座り込んでいた俺は、膝に顔を埋めてただただ待ち続けていた。
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