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願う冬 3
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「…さむ」
びゅうっと吹いた風は冷たく、俺はきゅっと体を縮こませた。
歩道に植えられている木々の葉はすっかりなくなり、吐く息は白く、雪でも降りそうな冷たさを孕んだ空気。
またひとつ季節が過ぎて、冬へと姿を変えた街並みはどこか淋しさが漂う。
「時生さん」
病室に入ると時生さんは起きていて、その視線は窓へと向けられていた。
呼びかけるとゆっくりと振り向き、優しい眼差しと目が合う。
近づいて椅子に座り視線の高さを合わせると、時生さんの手が伸びてきて頬を撫でた。
「…冷たいな」
「外、すっごい寒いよ」
「そうか」
頬を撫でる時生さんの手は暖かく、その心地よさに目を細めると時生さんはもう片方の腕を伸ばしてきて、きゅっと抱きしめられた。
「俺冷たいよ?」
肌だけじゃんく服も髪も冷気に晒されて冷たくなってる。
時生さんの体が冷えてしまうと思って離れようとするも、時生さんの腕は放してくれなくて。
「…冬の匂いがするな」
髪に頬を埋める時生さんが、そうポツリともらした。
その腕の拘束に、抜け出せないほどの強さはない。
だけど俺は抜け出すのを止めて、そのままその腕に身を任せた。
時生さんの声が、どこか寂しそうに響いたから───。
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