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透き通った目
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*
なんで
なんでわからないんだ
なんで伝わらないんだ
なんで…
僕は泣いた
部屋の隅にうずくまって
辛かった
毛糸玉が転がってる
ソラに渡すマフラーが机に放られてる
ソラに似合う毛糸を選んだはずだった
一生懸命編んだつもりだ
飾り編みも入れて、彼が喜んでくれる精一杯のことをした
だから渡したいけど、でも彼は喜んでくれるのだろうか
もはや僕には彼の心がわからなかった
コンコンと、扉が叩かれる
誰だろう
「入ります、佑哉さん」
海人だ
泣いている顔を見られたくなくてシュラフの中に隠れる
気配が近寄ってくる
「佑哉さん…今日、なんで俺が止めたの、聞かなかったんすか」
だって…収録が一番だと思ったから
でも、無意味だった
僕は響かないのかな…
「ねぇ、海人…」
「何すか?」
「もし友達に、自分の思いが伝わらなかったら、どうする?」
「なんか恋愛すか?」
「違うよ」
きょとんとしてる海人のその目は透き通っている
伝わってはいないけれど、何かが届いているのはわかる
彼の目は、遮断するんだ
思いを
なんでなんだろう
「まー、よくわかんねーっすけど、俺なら伝えますね」
「伝わらなかったら?」
「伝わらなかったらの前に、伝えますよ。思ってること溜め込むとか一番よくねーって教えてくれたのは佑哉さんでしょ?」
思っていることを溜め込まない
なら、僕は何を思ってる?
…僕が思っているのは、彼と友達になりたい
それだけ
なら、それを伝えれば良い
伝わるまで、なんどでも
僕は立ち上がった
「海人、ありがとう!」
「ういっす!なんかよくわかんねーっすけど、佑哉さんの力になれてんなら嬉しいっすわ!」
彼はいつも笑ってくれる
おかげで僕も元気をもらえた
マフラーを手に取ると、廊下に出て、彼に会いに行く
扉をノックしても、彼は出ない
もしかして出掛けているのかな?
ドアノブを回すと鍵はあいていた
「入るよ、ソラ」
返答がないまま扉を開けると、入り口には二つ、誰かの靴があった
取り込み中かな?
「あ、はぁ!…ダメ…、佑哉さん、来てる…!」
ソラの声
喘いでる
まさか、八十島さんと深瀬さん?
なら助けなきゃ
だって、決めたんだから
僕は彼の友達になるって
助けなきゃ…
僕は中にはいった
そこにいたのは、首輪をした犬
八十島さんのそれを舐め、深瀬さんのそれを受け入れ、精液の滴った体を持つ、汚い犬
妖艶なはずなのに、どこか汚し、堕としたくなる色気を持つ少年が、堕ちた姿がそこにあった
信じたくなかったもの
なんで
「ソラ…」
「佑哉…さん…」
その目は僕を嘲笑っていた
俺の本当の姿ですよと言わんばかりに
八十島さんの笑い声が聞こえる
辛そうに演じるソラ
寂しい
僕は…
「八十島さん…やめて…! 佑哉さん助け…あぅっ!」
虐めを受けるソラの、なんと妖艶なことだろう
瞳は死んだままなのに、彼に引き付けられ、吸い寄せられ、僕は彼に歩み寄っていく
違う
僕はそんなことしたくない
なんで僕は彼のそれに口をもっていってる?
八十島さんと深瀬さんがにやにや笑う
体を必死に制御して、止めようとしても、その体は動いてくれない
「佑哉…さん…?」
狙っている
ソラの目は僕も八十島さんの仲間になれっていってる
でも、ダメだ
僕は、僕はソラと友達なりに来たんだ
ソラは犬でもなんでもない
…僕は何を考えていたんだろう
谷田川ソラ
大切な仲間
そして…今から友達になる人間の名前
鎖で縛られたように動けなかった僕の体が動いた
咄嗟に八十島さんと深瀬さんをふっ飛ばし、ソラの体を抱えて走る
「佑哉さん…!」
本当に動揺してる目だ
僕の見たかった本当の目だ
すごくドキドキしてるけど、僕は楽しかった、嬉しかった
廊下に出て、階段を登り、自分の部屋へ駆け込む
「あ、佑哉さっ…ソラ!?」
僕の部屋をおずおず出ようとした海人と正面衝突したけれど、それもまあ、良しとしよう
部屋に入ると急いで鍵をかけた
大丈夫
きっとうまくいく
暗い顔のソラに笑いかけると、またわからないといった顔をした
きっと友達になれる
すごく幸せだった
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