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「相棒」はどっち?
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梟谷は例年の如く春高を勝ち進み、狢坂との試合を終え、赤葦と木葉はひっそりと人気のないところで逢引していた。
「……赤葦、もう大丈夫そうだな。」
「う……スミマセンでした……。」
狢坂との試合では変なプレッシャーを抱えてしまった挙句、空回りをしてしまった。勝てたとはいえ、迷惑をかけたことに変わりはない。
「いや、責めてるわけじゃないからな!?……にしても、赤葦は色々背負いすぎ。こっちが心配なるわ。」
「ハイ……」
「木兎の言ってた……「絶対に負けられない戦い」とか思ってない?っていうのは俺も感じてた。というか、直接言われたしな。」
「カッコ悪いとこ見せましたね……。」
「全然。……というか、赤葦の相棒が木兎ってカンジでちょっと……なんか……」
木葉は恥ずかしくなり、ごにょごにょと歯切れ悪くなった。
試合中に木兎は赤葦に対しストレートな物言いをし、「短時間で冷静に戻るよ。」と言い放った。実際、赤葦はすぐに調子を取り戻し、セッティングも良かった。
その事実がなんだか胸に刺さった。
「どうしました?」
「木兎が、赤葦のことを俺より分かってたのが……ちょっとショック。」
「どういうことですか?」
「赤葦がベンチに行ったとき、アイツは「短時間で冷静に戻るよ。」って言ってた。……実際、そうだったし……。」
「あぁ、そういうことですか。……木葉さん。」
赤葦は体ごと木葉の方へ向き、言った。
「烏滸がましいとは思いますが、俺は木兎さんの相棒になると思います。」
「うっ」
木葉にとって、グサッと音が鳴ったのではないかと思うほど、その言葉の攻撃力は高かった。
なんなら、視界が歪んで眩暈を起こすのではないかと焦った。
「でもそれはバレーの話です。プライベートの相棒は木葉さんです。」
「お、おお……」
「それに、木葉さん言ってくれてましたよね、木兎さんに。」
「……自分が調子良いからって、のやつ?」
「はい。俺は嬉しかったですよ?」
赤葦は木葉の指を絡めるように軽く優しく握った。
思わず木葉は顔を背け、視線を外した。
「木兎さんは、俺が冷静になると考えてくれた。木葉さんは俺の心配をして、気遣ってくれた。それだけの違いです。俺を想ってくれた先輩の言葉に優劣なんてつけられません。」
「あ、ありがとう……」
赤葦はクスリと笑った。
「こっちのセリフですよ。……それに、俺がいつも冷静に戻るとも限りませんしね。」
「?ごめん、なんて?」
「いえ、なんでもないです。それより、もうすぐ戻りましょうか。」
「あぁ、そうだな。」
ベンチから試合を俯瞰していたとき、赤葦は自身の驕りと成すべきことを自覚した。それと同時に、思考の端くれでは別のことで占めていた。
木兎に「寄越せ」と言われるのに対し、木葉は「ヤだね」と返していた。赤葦からすると、そちらの関係の方がよほど「相棒」ではないかと若干嫉妬すら覚えた。
だから、そういう意味でも赤葦自身がこのまま木兎の「相棒」ポジションにいることで都合が良い。
……なんて。
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