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椿の如き恋。
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一瞬だけ言葉が、意味が、理解できなかった。否、理解しようとしなかったのかもしれない。
「……え。」
焦点が合わなくなり始めた。どこを見たらいいのかすらわからない。
「い、意味、わかんない、んだけど……」
「そのまま、元の先輩後輩に戻りましょうってだけの話です。」
赤葦は眉を動かすことも視線を変えることなく言い続けた。
「ちょうど良い機会ですし、お互いリセットってことで。」
「なんで勝手にお前が決めるんだよ!?リセットってなんだよ!……なに、遊びだったとか……?」
思わず立ち上がり赤葦の袖を力一杯掴んだが、赤葦に手を離された。
「まぁ、外れてはないです。」
「なん……だよ、それ……お前、遊びで告白するような人間だったのかよ……」
反論すらなかった。
木葉に背を向け、歩き出しドアに手をかけた。待ってくれ、行くな、と言いたかったが、喉につかえてできなかった。
赤葦は一瞥することもなく、最後の言葉を発する。
「さようなら、木葉さん。」
ピシャリ、と鳴った音が本当に終わったのだと追い討ちをかけるように思い知らせる。
呆然とするしかなかった。
ぬるい涙は頬を伝って床へと落ちる。次々と溢れ出る涙を止めようとすらしなかった。
本当に、遊ばれただけなのか?赤葦は本当にそんな人間なのか?疑って仕方がなかった。
けれど本人が言う以上、確かめる術はない。
真実はどうであれ、赤葦は別れるという選択をしたという事実が悲しくてしょうがなかった。
「……好きになった責任、取ってくれよ。」
ぽつりとこぼすと同時に嗚咽した。
失望、虚無、幻滅、この気持ちをどうしたらよいのかわからず、発狂しそうだった。
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