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「正しい」とは。
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「俺たちも終わりにしましょう。」
そう言ってからの続きは正直、あまりよく覚えていない。涙を堪え、声を震わせないようにすることな必死だったからだ。
赤葦にとって、木葉は今までもこれからも好きな人に変わりはない。けれど、この選択をした。
教室を出てからは、容量を超え涙を堰き止められなかった。
泣く権利なんて微塵もないのに。傷つけた側の人間がよくも泣けたなと、自分で自分を軽蔑した。
◇◆◇◆◇◆
遡ること数ヶ月前、夕食時のことだった。
親がつけたテレビをいつものように流し見しているとLGBTの特集をしていた。
写っていたのは、かつて女性と交際していたが、現在は男性と結婚している女性だった。
『そうですねー、交際していた人のことは好きだったんですけど、現実的には生きづらいじゃないですか?周りの目とか、親の心配とか。』
『やっぱり、普通に結婚して家庭を持つ方が結局幸せなんじゃないかって思いましたね。』
そういう女性は後悔する様子もなく、現在の幸せを噛み締めているようであった。
それを観ると、木葉のことを考えずにはいられなかった。元々女性が好きな人を、自分が無理やり巻き込んだようなものだ。木葉は自身のことを好きだと言ってくれるが、それは錯覚に陥ってるだけではないのか。そんな思考がよぎった。
これから木葉は高校を卒業し、大学へ行き、さまざまな出会いや経験をするだろう。そのとき自身が隣にいることで木葉の幸せを妨害しているのではないだろうか。好きな人の本当の幸せを願うことが正しいのではないか。
そう考えれば考えるほど、自身の行動が愚かに思えた。
そして、赤葦は決意した。
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