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最後に言うことって何。
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「うげっ…」
教室に着き、真っ先に目に飛び込んできたのはバレー部のメンバーだった。(主に3年生)
こうして木葉秋紀の女装隠蔽作戦は見事砕け散ったのであった。
「あっれ〜?おかしいな〜?木葉クンは女装しないんじゃなかったんですかね〜〜?」
「うるせぇよ。」
「木葉女装似合ってるぞー!!」
「木兎うるっさい!」
木兎の声はガヤガヤしている教室内でも響くほどだった。その声を聞いた人たちの視線が突き刺さるのを木葉は目を背けながら感じていた。
しかもなんで堂々と客として来てるんだよ。せめて廊下から見るだけにしろよ。いやお願いしますそうしてください。
「赤葦…もしかしてハメた…?ねえハメたの?全員集合してるの知ってた?」
「ちょっと何のことか分かりませんね。」
「確信犯じゃねえか!!」
後輩にハメられるなんて…不覚すぎる…と手を顔に当てた。そして小見がニヤニヤしながら追い討ちをかけるようにいじってくる。
「なー接客しなきゃいけないんじゃねーの?木葉秋ちゃん?」
「その名前で呼ぶのヤメロ。」
と、そのときクラスメイトの女子から呼ばれた。やっと
このモンスター達から離れられる。そう安堵した。
とにかく、早く時間が過ぎろということしか考えていなかった。
女子にクッキーとジュースが乗せられたトレイを渡され、それを受け取り、接客モードに入る。
「これ、4番テーブルに。」
「あーオッケー。4番4ば…んんん!?」
「なに。どうしたの。」
「なんで俺がアイツらの席に…?」
そう、4番テーブルはバレー部メンバーが集結している席。離れられたと思ったら次は接客として行くのか?
何故俺に頼んだんだ。一体神はどれだけの試練を与えたら気がすむのか。
「それがどうしたのよ。同じ部活仲間ってだけでしょ?」
「だから余計に嫌なんじゃん!!新手のいじめ!?」
「たまたまだってば。もー早く行ってきてよ。」
心は嫌でも体は動いた。動かざるを得なかった。
真顔(またの名を死んだ目)で4番テーブルへ行く。
ニヤニヤしながら待ち構えてる姿はさながら格好の獲物を見た獣だった。
そしてマニュアル通りのセリフを言う。
「お待たせしました、クッキーセットになります。」
超絶棒読みで言い終え、スタコラと立ち去ろうとしたとき、ずっとなにも言わなかった猿杙が言葉を発した。
「秋ちゃん、最後にもう一つ言うことあったんじゃないかな
?」
「だから秋ちゃん言うなっての…最後に言う?ナニソレ。」
知っている。本当は知っているのだ。けれどアレはあくまで任意、ノリで言うものだ。俺は絶対に言わないと最初から決めていた。
「じゃーあーー…女装してたこと今からバレー部全員に回るけど…いいんだな?写真、付いてるぞ??」
小見がラインのバレー部グループの画面を見せながら言う。しかもご丁寧に文は送られる寸前だった。まず写真なんていつの間に撮っていたのか。
なんて汚い手を使うんだ。脅迫かよ!どこまでいじる気なんだよコイツらは!
でも、俺は屈しない。そんなモノは後でコラージュとも言える。現代じゃ素人で幾らでも作れるんだからな。脅しがまだまだ甘いな!!
「…ごゆっくりどうぞ……ご主人様…。」
だってさ、バレー部全体に回るとかもう居た堪れないじゃん?レギュラーの先輩から女装の先輩にシフトチェンジ確定じゃん?3年生だしもうここで女装野郎の烙印が押されたら挽回のチャンスとか無いわけじゃん?
つまり屈するしか道はなかったというわけだ。
もう言った、俺は言ったぞ。と最大の壁を乗り越えた木葉は達成感さえあった。
「ヒュー秋ちゃーん!!」
「お〜よく言った!」
「ちょっ、すいませんそんなオプションあったんですか俺全然知らなかったんですけど、あのもう一回言ってくれません?今ボイスレコーダーの用意するんで」
「もう帰れお前らぁぁぁ!!!」
こうして、とんでもない災難を食らいまくった文化祭1日目は幕を閉じた。
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