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ドレスコード
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着いた先は外観からして、とても自分みたいな一般人が入れる店ではない。
既に先に着いていた部下が店先で待っていた。
やはりこの店へ入る様だ。
祐羽は車からそそくさと降りて、今度こそ九条にピタリと斜め後ろにくっついた。
ドレスコードのある店になど行ったことなど無い。
ここは九条に貼り付いて全て真似して、無事にやり過ごすしか他にない。
自然と手に力が入ると同時に、表情筋も強ばっていく。
そんな祐羽を九条は無言で見下ろしていた。
「…」
「…ここ、ですか?」
見られている事など気づきもせずに、祐羽はカチンコチンになって店のドアを潜り抜けた。
九条にさえ着いていれば間違いないので、とにかく離れない様に寄り添う。
大人の九条が今ほど頼りになる事はない。
九条が立ち止まったので体温を感じる距離で同じ様に止まると、また視線が向けられた。
それと同時に店員が優雅に頭を下げ出迎えてくれる。
九条は視線をそちらへと向けた。
「九条様、ようこそお越しくださいました。ご案内致します」
そうして店員の後ろに九条と祐羽が着いて歩き、その直ぐ後ろから眞山たちが続いた。
店内から他の客からの熱い視線が九条へと向けられているのが分かった。
それと同時に自分にも向けられているのが分かり、ドレスコードがあると言われた意味が漸く理解出来た。
客の全員がジャケットを身につけた紳士と、上品な装いの淑女ばかりだった。
なんとなく自分の姿を確認し、本当に服を用意して貰えて良かったと思う。
こんなきらびやかな空間にあの格好では、余計に落ち着いていられなかっただろう。
そうして店内の奥へと案内されたその場所は個室ではあったが、中へ入ると思ったよりも広い空間だった。
テーブルの上には銀色に光るカトラリー等、既に綺麗にセットされていた。
こんなお店で食べたことないよ…。
その間にも椅子を引かれて九条が座る。
祐羽にも同じ様に椅子を引かれたが、それに戸惑ってしまう。
本当にいいのかな?
こんな高そうな店おでご飯なんて…お金…。
「座れ」
「あ、はい…」
九条の一言で、仕方なく椅子へと腰掛けた。
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