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「三日月は、なんで『三日月』っていう名前なんだ?」
「たぶん、私の本性が夜空の三日月に似ているからだと思うよ。私の白蛇としての本性は、白くて、細くて、クネリとしていて、夜空に浮かぶ三日月に、どこか似ているから」
「ふーん、なるほどなあ。それじゃ、おまえは俺になんで『暁丸』っていう名前をつけたんだ?」
「それはもちろん、君が暁そのもののように見えたからだよ」
「おまえには、俺がそんなふうに見えたのか?」
「ああ。そういうふうに見えたし、今だってそう見えている」
「……ふーん、なるほど」
「もしかして、他の名前に変えたかったりするかい?」
「別にそういうわけじゃねえよ。『暁丸』って名前は気に入ったって、前言ったろ?」
「そうだったね。ありがとう」
「三日月」
「なんだい、暁丸?」
「別になんでもないけど、おまえの名前を呼ぶの、好きだ」
「そうか。ありがとう。私も、君の名前を呼ぶのが好きだよ、暁丸」
「そっか。ありがとな、三日月」
「どういたしまして」
「どういたしまして――か」
暁丸は、少し驚いたように目をしばたたいた。
「俺、そんなこと、誰かに言ったことってねえなあ」
「そうかい。まあ、君はまだ若いのだからね。今までそんな機会がなかったとしても不思議はなかろうよ」
「チェッ、だからいつも言ってるだろ! 竜っていう種族がどんだけの寿命を持ってると思ってるんだよ! 俺、もしかしたらおまえより歳が上かもしれねえぞ?」
「え、ほんとかい? 暁丸、それじゃあ、君は今、いったいいくつなんだい?」
「さあ、知らねえ。そんなのいちいち数えてねえもん」
「そうか、なるほど」
「逆に、おまえはいちいち数えてるのかそんなもん?」
「まあ、一応、この小望月村の蛇神となってからの年月はそれなりに数えているし、それに、村の記録にも残っているはずだよ」
「へー、すげえな」
「君にそう言ってもらえると、なんだかうれしいな」
三日月は、はにかんだように笑った。
「君だってこれからは、その名と業績を、この村の記録に刻むことになるんだよ、暁丸」
「……ふーん……」
暁丸は、どう反応すればいいのかよくわからない、と言いたげな顔で、それでもその場を立ち去ろうとはせず、三日月の傍らで、その金の瞳をしばし、静かに揺蕩わせていた。
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