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「三日月」
「ん?」
「空に、三日月が出てるぞ」
「ああ、本当だ。教えてくれてありがとう、暁丸」
「……なあ」
「なんだい?」
「俺、なんでこうやってずっと、おまえのそばにいるんだろう?」
「え? ええと……それはいったいどういう意味だい、暁丸?」
「…………」
暁丸は、ひどく困ったような顔で、ゆっくりと金の瞳をしばたたいた。
「……俺、こんなに長いこと、誰かといっしょにいたことって、ねえんだ」
暁丸はポツリとそうつぶやいた。
「そうかい。私もね、竜とこんなに長いこと、親しくおつきあいするのは初めてだよ」
三日月は、穏やかに微笑みながらそう告げた。
「……竜以外とは?」
「え?」
「竜じゃねえやつとは――ずっといっしょにいたことがあるのか?」
「そう、だね――」
三日月の緋色の瞳が、わずかに驚いたように見開かれた。
「村のみんなとは、ずっといっしょにいると言ってもいいのかもしれないが――」
三日月の細く、白く、形のいい指が、そっと暁丸の指に絡んだ。
「こんなふうに近々と、誰かがずっとそばにいるというのは、私にとっても、やはり、その――」
「竜じゃねえやつも?」
「え?」
「竜も、竜じゃねえやつも、ぜーんぶひっくるめて、俺が初めてか?」
暁丸は、食らいつきそうな勢いで三日月にそう問いかけた。
「……たぶん、ね」
三日月はうっすらと笑った。
「この村の蛇神になる前のことは、きちんと全部覚えているわけじゃないから、だから、私が覚えていないだけでもしかしたらそういうことがあったのかもしれないけど、でも、少なくとも、私が覚えている限りにおいては――」
「俺が初めてか?」
ズイ、と身を乗り出しながらそう問い詰める暁丸に。
「そう、だね、うん――君が、初めてだと思うよ、暁丸――」
三日月は、微笑みと共にゆっくりとうなずきかけた。
「……そっか」
暁丸は、大きくうなずきながら、ポフリと傍らの三日月の肩にその幼い少年の頭を乗せた。
「暁丸? 眠くなってしまったのかい?」
三日月は、おっとりとそう問いかけた。
「別に、そういうわけじゃねえけど。おまえ、こういうふうにされるのいやか?」
暁丸は、上目づかいにそう問いかけた。
「いいや。むしろうれしいよ」
三日月は、クスリと笑いながらそうこたえた。
「……ふーん……」
暁丸は、どこか満足げに鼻を鳴らしながら、三日月の肩口に、グリグリと顔や頭をこすりつけた。
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