アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
31
-
「最初の時みてえに、すべり、よくするもんつけたほうがいいかな?」
「ああ、つくってもらったんだ」
「へ? つくってもらった?」
「えっと……うん」
三日月は、はにかんだように笑いながら、トロリとした釉薬がかかった壺を取り出した。
「へー、村のやつらにつくってもらったのか?」
「ああ、そうだよ」
「ふーん」
暁丸は、真面目な顔で壺の中に入った粘性の高い液体を指ですくいとってベロリとなめた。
「……あんまり美味くねえな」
「そりゃ、美味しく食べることを目的につくられたわけじゃないからね」
どことなく残念そうにそうつぶやく暁丸に、三日月は少しおかしそうに笑いながらそう説明した。
「今度はもう少し美味くつくるように言っとけよ」
「ああ、うん、一応言っておく」
三日月は、クスクスと笑いながらそうこたえた。
「で、それ、使えそうかい、暁丸?」
「え? あー、うん、大丈夫なんじゃねえの?」
暁丸はそう言いながら、ペタペタになった指を三日月の頬にヒョイとなすりつけた。
「うん、大丈夫な感じだ」
暁丸は真顔で三日月にうなずきかけた。
「ああ、大丈夫そうだね」
三日月もまた、微笑みながら暁丸にうなずき返した。
「人間って、器用だな」
暁丸は、素直にそう称賛した。
「そうだね、器用だね」
三日月もまた、真顔でその言葉にうなずいた。
「なあ」
「ん?」
「どれくらい使えばいいんだ?」
「そうだね――まあ、出来るだけたっぷり使ったほうが無難、かな?」
「なるほど」
暁丸は真面目くさった顔でうなずいた。
「なあ、この手、このまま入れていいだろ?」
暁丸は、壺にどっぷりと浸し、トロトロとした液まみれになった右手をヒョイとかざしながら、期待に満ちた目で三日月を見つめた。
「……もちろん」
三日月は、ニィッと唇と横に引いた。
「紅いけど、でも、入れちゃ駄目っていう感じじゃねえな」
暁丸は、三日月の蛇体に息づき襞を、ぬらぬらとした手でスッと撫でた。
「今、紅いのは、その……腫れているわけじゃなくて、たぶん、一種の婚姻色なのだろうと思う……」
三日月は、恥じらいに白い頬を染めながら小声でそう説明した。
「へ? こんいんしょく?」
「番いになるための色、という意味だよ」
「えー? 俺達もう番いなのに、これ以上もっと番いになるのか?」
暁丸は、きょとんと首をかしげた。
「ああ、その、ええと、こ、子供を孕む準備が出来たという徴の色、と言ったほうが、君にはわかりやすかったかな?」
三日月は、紅く染まった頬にさらに血の色を上らせてさらに説明を重ねた。
「なるほど!」
暁丸の両眼が、純粋、かつ強烈な喜悦に染まった。
「そっか、だからこんなに綺麗なんだな」
暁丸は、ぬらぬらとぬめる襞の上に、スリ、と優しく頬ずりをした。
「君がそう言ってくれると、私は本当にうれしいよ、暁丸」
三日月は、緋色の両眼を細めて愛しげに暁丸を見下ろした。
「……あ」
そのぬめる右手を、躊躇なく三日月の襞の中に突き入れた暁丸は、その金色の両眼を炯々と輝かせながら莞爾と笑った。
「中のほうが、外よりもっと、ずっと、いい!」
「それは、よかった」
三日月はクネリと笑った。
「なあ」
「ん?」
「痛く、ねえだろ?」
「ああ。むしろ――」
「むしろ?」
「むしろ……気持ち、いい……」
三日月の笑みと体がユラリと揺らいだ。
「よかった」
暁丸は屈託のない笑みを浮かべた。
「俺、おまえが痛いのやだもん」
「ん……ありがとう、暁丸」
暁丸と三日月は、どちらからともなく顔と顔を寄せあい、舌と舌とを絡めあった。
「……やっぱり、おまえが一番美味い」
「そうだね、君も、とても美味しいよ、暁丸」
「一番美味いか?」
「ああ、一番美味い」
「そーだろー」
暁丸は、誇らしげに胸を張った。
「でも、まだ、食っちゃ駄目なんだろ?」
「ああ、まだ、全部は駄目だよ」
「チェッ」
と、軽く舌打ちしながらも、暁丸は期待と欲情にその目を爛々と輝かせた。
「じゃあ――食う代わりに、おまえのこと孕ませてやる」
「ああ、大歓迎だ」
暁丸と三日月は、互いにその、世の常の人にはない色の両眼を見あわせてにんまりと笑みかわした。
「……こっちにもかけとくか」
暁丸は、真顔でそうつぶやきながら、己の怪物的な怒張に壺の中身を惜しみなく流しかけた。
「……あ……」
三日月の目がトロリととろけた。
「欲しい、な、それ……」
「欲しいか?」
暁丸は、ベロリと舌なめずりした。
「うん。……それ、ちょうだい? ね?」
三日月は、どこか幼げにそう懇願した。
「全部やる」
暁丸は、一瞬の躊躇もなくそう宣言した。
「だから――俺に、食われろ」
「……喜んで。我が背の君」
そして。
紅と白とは、新たなる色を産みだすために互いを溶かしあう。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
31 / 45