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春樹
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トイレから戻ってきた春樹の様子が少しおかしかった。
僕の横で姫が立ち上がり身を乗り出した。
顔を赤くして少し焦点の合わない春樹の目が姫の顔を捉える。ぼーっと見つめているその瞳には抑えきれない欲が滲み出ていた。
「春樹、お前顔赤いけど熱でもあるの?」
そう声をかけると春樹が少し怪訝そうな顔をしたあと妙に納得したような表情で頷いた。熱があるようだったらさっさと連れて帰らないと、姫にうつったら大変だし……そう思って春樹の隣に移動する。
そんな僕をよそに春樹が口を開く。
「ね、姫。冬樹。せっかく来たけど、一限抜けちゃおう。部室、行こうよ」
部室ぅ??
何言ってるんだろう。
熱があるのか? からその話に飛躍する春樹の頭が心配になる。
この時間に部室ってことは多分、ヤりたいんだと思うけど……
やけに獣じみた視線を向ける春樹に姫も異常を感じたらしい。姫が声をかけた直後、春樹の体が傾いた。
「おい!」
「はるきっ?!」
咄嗟に春樹の肩と腰を掴む。
自分と同じ身長、体重のデカ男を支えきれるはずもなく、崩れ落ちるスピードを緩めることしかできない。
頭をぶつけないよう抱え込み、寝かせる。教室がざわめき、何人が飛び出していったのが見えた。
「春樹! 春樹っ! どうしたの?!」
真っ赤になった春樹とは真逆に血の気が引き真っ青な顔をした姫が春樹の手を握る。
服越しに感じられる、僕と同じで低いはずの体温が熱い。なぜさっきまで気がつかなかったのか不思議なくらい、熱が高いのは確かだった。
何度か姫に声をかけるがパニックに陥っているのか声が届かない。止むなく腕を掴み僕の方へ注意を促す。
「那都」
目を見て名前を呼ぶ。怯えたような瞳に少し安堵が滲む。
「大丈夫だから、僕と春樹の荷物纏めてもらえる? 姫も、すぐ出られるようにしていて。家まで荷物、持ってもらわなきゃいけないから」
「う、うん……奏汰はどうしよう……」
「そうだな、もしすぐ戻ってくれば手伝ってもらおう。一応連絡しておいて」
「わかった…!」
淡々と指示を出してあげると姫も本来の冷静さを取り戻したらしい。電話をかけながら荷物をまとめ始める。
僕は春樹の顔色を伺いながら少し服を緩め苦しくないようにしてやる。すると少し荒かった息が落ち着いた。
「橋本くん! 先生、来たよ!」
そう呼びかけてくる声に入口を振り返ると養護教員が担架を抱えて入ってきたところだった。
「先生、こっち!」
姫が呼び寄せたのを確認して僕は春樹を抱き直した。
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