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いない…?
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相変わらずの冬樹の態度に、どうやって機嫌を直してもらおうか悩んでいると後ろが騒がしくなった。
振り返るとその中心にいるのは奏汰で、俯いているのが見える。中村くんがふっと顔を覗き込むと、慌てたように奏汰の腕を掴んでいた。
奏汰は掴まれている腕とは反対の手で頬を触り、はっとしたように顔を上げる。
正面を向いたことで奏汰が泣いているのがここからでもわかった。
少し離れたところから女子……たしかよく中村くんと一緒にいる子……が何か言う。その表情は酷く甘く、媚びているかのようだった。
中村くんの手が下に滑り、奏汰の手を握る。奏汰は再びうつむいた。
女子に中村くんが何かを答える。その表情に、俺は盗み見ているのが申し訳ない気持ちになって、姫と冬樹の方を見た。
「……い、ない…?」
さっきまでいたはずの二人がいない。
荷物もなく、完全にもぬけの殻で、呆然と眺めると立ち上がった。
「…くそっ」
初夜の日を思い出す。
嫉妬に狂った冬樹が気を失った姫を一方的に犯していたあの日を。
教室を飛び出すも、二人の姿はなく。
俺はスマホを取り出すと姫の電話番号を呼び出し、耳に当てたまま呼び出し音をBGMに走り出した。
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