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行方不明 7 ※残酷な暴力表現あり
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※暴力表現あります。大丈夫な方のみお読みください。苦手な方はこのページを飛ばしてください。
『気持ち悪い』
歩きながら、みぃちゃんに言われた言葉が頭の中で何度も何度も木霊する。
『男のクセに』
『キモいんだよ』
昔、あの男たちに言われた言葉が蘇る。
「気持ち悪い……か……」
目頭が熱くなる。はるちゃんも言っていたように、みぃちゃんがぼくと春樹冬樹のことを喜んでくれていたのは知っていた。大切な人ができた、と報告したとき自分の事のように泣きながら何度も何度もよかったね、よかったねと言ってくれた。その相手が同じ男で、双子だと言っても那都がそれで幸せなら、と言ってくれた。
だから、本気じゃないってわかってる。でも……
それでも、だからこそ、そんな人の口から出た気持ち悪い、という言葉はより一層深くぼくの心を抉っていた。
ブンブンと頭を振って、ぐいっと目もとを擦る。
二度深呼吸をした。
「今夜、二人と過ごして明日みぃちゃんに謝ろう……」
小さくつぶやく。だいぶ、怖がらせてしまったから。
そう決心して顔をあげる。なんだか周りが暗い気がして辺りを見回した。
「……ここ、どこ…?」
ぼうっと歩いていたせいだろう。大通りから一本外れた路地裏にいた。
昼間よりは減っているけれど、決して少なくない雑踏が少し離れたところに見える。なんだか嫌な予感がして戻ろうと踵を返して足を踏み出した。
「おねーさん」
「いっ……!」
後ろから知らない男の声がして、後頭部で一つに括った髪をぐいっと引っ張られる。
いきなりでこらえきれず、ドッと後ろに倒れ込んだ。
「なに……」
男が鼻息荒く、ぼくのお腹の上に跨った。
「やめて! いや、どいて!」
レイプされる……気がついて、叫ぶ。でも恐怖で掠れた声しか出ない。
「無駄だよ」
男がまた喋る。ニヤリと笑ってスカートから手を入れ、内腿を触った。
「いやっ……」
ゆっくりと、何度も何度も往復する。暴れてみるも、考えられないような力で押さえ込まれた。
足を触っていた手が上に移動する。下着を潜って性器に触れる。男の手が止まった。
「……は?」
ネットリとした低い声。
「お前、男? うわっ、きもちわりぃ」
『気持ち悪い』
みぃちゃんの声がまた蘇る。体がすくむ。
「萎えた」
男が手を服で拭いて立ち上がる。難を逃れた……ほっと息を吐く。しかし。
「てめぇ、きもちわりぃんだよ」
「っ! が…っ」
体を起こそうとついた右手を思いっきり踏みにじられる。ぐりっと靴を動かした男の足に、右手の骨がメリっと音を立てる。頭を貫く激痛に体が捩れる。
足が右手の上からどかされる。左手で庇うように右手を包み、体を丸める。しかし、男はそれだけでは満足しなかった。
「男のクセにんな格好しやがって、きもちわりぃんだよ」
声を荒らげるでもなしに、低い声で呟く。
怪我をした右手を守るのに必死で、腹部ががら空きになっていたことにまで気が回っていなかった。
体重をかけた蹴りが鳩尾に叩き込まれる。胃の中のものがこみ上げてきて吐き出された。
何度も蹴られる。それまで以上に体を丸めて腹部を隠す。
5分? 10分? 1時間? もうわからない。吐くものもなくなって胃液を何度も吐いた。血が混ざっていたのか、それとも本当に吐血をしたのか、鉄の味が口内に蔓延する。何度も与えられる痛みに意識が朦朧としてきた時だった。不意に暴力が止む。終わったのか。
確かめる力もなく、丸まって汚れた地面に横たわっていた。男は暴行をしているあいだ中何か言っていたようだが、なにも耳に届かなかった。
ぐいっと胸ぐらを掴んで起こされる。
男の、どんよりと曇った目が僕の薄く開かれた目を見つめる。ニヤリと陰気に笑うと、男は口を開いた。
「じゃあな」
そう呟いた男は拳を振り上げ、ぼくの顔に思いっきり叩き込んだ。
ぎゅっと強く目をつぶっていたけれど、痛みを塞げる訳が無い。一番の痛みかと思われる痛みが顔面を襲い、ぼくの意識はそこで途切れた……
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