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じゃじゃ馬姫
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入学式、主席入学した神楽は新入生代表として壇上で挨拶した。
白銀の髪が照明に照らされて、眩しく輝いていた。何を話していたかは、もうあまりよく覚えていない。その容姿に見蕩れているうちに、挨拶は終わっていた。
大多数、いや、神楽の過去から考えて、その場の全てが初対面──その中で、臆することなく凛と胸を張って、堂々と立っていた。
その姿は、気高くて、最高に恰好良かった。
そのせいで、近寄りがたい雰囲気があったけど、その実、話してみれば案外近寄りやすくて、俺はすぐに神楽と仲良くなった。今思えば、きっとひとめぼれだったんだろう。
投げかけられる言葉は少し乱暴だけど、それはきっと神楽なりの身を守る術なんだろうなって思った。だって、あんなに優しい瞳を、俺は初めて見たんだ。
気高さと、優しさと、沢山の傷を抱えたお姫様。
守られるだけで収まるのはどうにも気に食わないらしい、じゃじゃ馬なお姫様だ。
そのまま大人しく周囲の庇護を受けていたって、きっと許されただろうに。
1年生の時から神楽は「生徒会長になりたい」と言っていた。その理由はきっと、自分がもう守られなくても進めるということを示したかったからなんじゃないだろうか。
「──さぁて」
『紫月』と表札がかかった門の前で足を止める。時計は9時57分を指していた。
玄関に目をやると、すり硝子の向こうが明るいのが分かって、もしかして玄関で待っているんだろうか、とか考えてクスリと笑ってしまう。
インターフォンを鳴らして、扉が開いたなら、恭しくお辞儀でもしてあげようか。「お迎えにあがりました、お姫様」なんて言って。
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