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心ここに在らず
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ついこの間テレビで取り上げられていたレストランに並ぶ3組ほどの客をスルーして先輩がスタスタと店内に入っていく。
「予約していた朱賀です」
お待ちしておりました、と店員さんがにこやかに席へ案内してくれた。
「この店、予約取れたんですか」
「昨日キャンセルが出たのか、たまたま空いてた」
にひ、と笑ってVサインを決める先輩はやっぱりどこか緩い。心地よく、一緒になって笑いたくなる緩さ。
……桜和は今、どうしているんだろう。
「…………で、──紫月?」
「ぇ、……あっ、すみません、何ですか?」
ぼんやり手元のメニュー表より遠くへ視線を送っていた俺の前に、朱賀先輩の大きな瞳が滑り込んできた。びっくりして顔を上げると、特に気を悪くするでもなく先輩は既に一度言ったのであろう言葉を言い直してくれた。
「この間、テレビの特集ではカルボナーラが絶品だって言ってたけど、何食べる? って訊いた」
「あ……じゃあ、それにします」
おっけーいと言って呼び鈴を押すと、カルボナーラを2つ頼んで水をひと口飲んだ先輩が切り出した。
「何か、あった?」
この人の怠そうな瞳は、実はいつも周りをよく見ていて、隠していても直ぐに何もかもバレてしまうんだ。
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