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怪我をしたらきちんと言いましょう
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「…神楽、歩き方変」
じっと訝しむ様に右の踝を見つめる桜和。まぁ耐えるのと隠すのは別で。痛いものは痛いと割り切ってるからしょうがないけど。
「別にいつも通り歩ってる。っていうか、俺の足より校内を見ろ」
少なくとも、庇って歩ってるつもりは俺自身にはない。
しかしながら、虚しくも悲劇は襲う。
懐中電灯で照らしながら階段を上っていくと、途中で足から力が抜けた。
ぐわ、と内蔵が押し上げられるような浮遊感が襲って、気持ち悪い。あ、これ、落ちる。
─トスッ
「わっ、と…神楽」
「……っ」
心臓がバクバクいってる。背中を冷や汗が伝う。
「足見せて」
「ぃ、や、何でも「神楽」…」
諦めて渋々階段に座り込み、ズボンを捲る。
「腫れてるんだけど」
「…」
「神楽」
「…ご、めん…っぅ、ぃた…」
触れられた瞬間に脚全体に鋭い痛みが伝わる。ズクズクと痛い。
「これ、折れてるんじゃない」
「え」
「折れてないにしてもよく今の今まで歩ってられたよね」
はー、と溜め息をついてガシガシと頭を掻いた。桜和に似合わない荒れた行動だった。
「もうさ、怪我したらちゃんと言ってよ。惚れてる身として、頼って欲しいの。困るぐらい、頼られたいの」
それ以前に副会長なんだから、とちょっと拗ねて言う姿が幼かった。
「分かった?」
「…わか、った」
「よろしい」にっこり笑って脚の間と背中に手を回してきた。
視界が急上昇。足が浮いてるし、何より桜和が近い。
所謂〝お姫様だっこ〟。男にして何が楽しい。
「わ、ちょっ、桜和!歩ける!」
「怪我して黙ってた悪い子は口答えしないでくださーい 今日の見回りはもうおしまいでーす」
「っわ、わわ、桜和!」
歩き出したせいで揺れる不安定さに思わずしがみつく。一度しがみつけば足への振動も消え、寧ろ落ち着く。
「明日、土曜日だけどきちんと病院行ってよ」
無言でこくりと頷いた。
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