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寝取り趣味
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「お前…兄弟いたのか」
通話を切ったのを見て、質問をぶつける。
「兄ちゃんが一人ね。車の免許持ってるし、今は大学出て就職。出張行ってたけど昨日帰ってきた」
「疲れてるだろ絶対…」
「あー平気平気。向こうで楽しんでくるらしくて いっつも出張から帰ってきたらハイテンションだから」
それは俗に言うランナーズハイ的状態なんじゃないのか…?
「多分10分もすれば着くよ。…出来れば会わせたくないけど」
「…?」
忌々しいげにスマホを睨む桜和。
「…兄ちゃん、誰かのものとか誰かの好きなものが好きなんだ」
「…え、と……?」
つまり…
「寝取り趣味…?」
「ちょっと違くて、あくまで〝誰かのもの〟である事が条件。つまり、自分のモノになっちゃったらもういらない。用済みのおもちゃ」
開いた口が塞がらない。とんでもない間抜け面をかましている気がする。
「特に俺の好きなものは堪らないらしい」
…あー……
ずくっと胸の奥が疼く感じがした。いわれのない不安感。自覚したばかりのこの気持ちはまだ上手く収まらなくて、すぐに気持ちの端々がはみ出てしまう。
「…そんな兄貴に取られるような隙だらけなのか、お前は?」
強がるように桜和の顔をのぞき込んで挑戦的に口の端を釣り上げれば、少しぽかんとして、すぐに意地の悪い笑顔になる。
腕の中に俺を抱き込んで、痛いくらい腕に力を込める。
「…そうだよねぇ…俺、まだ神楽のことオトせてないんだし」
もう既にオチてるなんて、言えない。
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