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服従〈伊吹side〉
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「ふわぁ……んんぅ」
眠い。夜ふかしをしたせいだろうか。別に、俺の意思でしたわけじゃないけど。
ピロン、とスマフォが鳴った。どうせ、あの人だ。
LINEを開けば予想通り、届いていたメッセージは天敵から。頭にオレンジ色がチラついてむかむかする。
『学校遅刻しなかった?』
遅刻しそうになったのは紛れもなくあんたのせいだよ、と送り返してやりたいのをグッと堪らえる。この人に下手に反抗するのは得策ではないし、いいことが何もない。
『大丈夫です』と、一言送ると、サイレントマナーに設定してスマフォをしまった。
昨日の淫行を思い出して、熱くなる頬を誤魔化すように首を振る。
…あんなことがもしバレたら…良くて停学…最悪、生徒会を―いや、学校を辞めさせられるな。
「流石にあの奥手な紫月にバレることはないだろうけど…」
眠いのは単純に低血圧だからってことで通してるけど、最近は低血圧関係ないって言うし…バレるのも時間の問題か。
鈍く痛む腰に顔をしかめながら屋上の手すりに寄りかかる。無駄にデカくなってしまったせいで手すりは腰の少し上辺りまでしかない。
「ふわぁーあ……」
冬の冷たい風が吹く。それで少しでも目が覚めればいいのに、とか考えたけど、相変わらず俺は眠いまま。視界の6割を覆う前髪が風になびいた。
「……」
『前髪の長い伊吹も可愛いけどさぁ。いい加減鬱陶しくないの?』
「…うるさいですよ」
今じゃあ、広い視界は落ち着かない。このくらい狭くて暗い方が安心して目を開けれる。
あのオレンジ色を直視するのは俺には少し辛い。目が痛くなって何処ぞの大佐のようになってしまう。生憎まだ失明したくない。青い石もいらない。
「…何で俺、あの人の言いなりになんてなってるんだろ」
別に、ならなくてもいいのに。
弱みを握られているのでも、賭けをしたのでもない。いつの間にか、そういうものになっていた。
「ふわぁ――はぁ………」
まぁ、単純にあの人の前じゃ『そういう思考』が通用しないからなんだけど。
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