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見かけ
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翌朝、俺が目を覚ました時、既に着替えを済ませて身なりを整えた閑さんはキッチンにいた。
「おはよぉ、伊吹。身体は大丈夫?」
「おはよう、ございます…大丈夫…です」
もうすぐ朝ごはんできるから座ってていいよー、と言う閑さんは卵をかき混ぜる。卵焼きを作っているらしい。
「なんか、閑さんって…見かけによらない…ですよね」
「えー?それ どーいう意味ィ?」
「細身なのに力あったり、チャラそうなくせに料理できたり…」
淡白そうなのに意外と性欲強かったり。そう言いかけてはっとなる。何言おうとしてるんだ、俺。
俺の言葉が不自然に切れたことには気付かなかったらしい、閑さんはハハッと笑う。
「中々言うなァ、伊吹」
温まったフライパンに流し込まれた溶き卵がジュワアと音を立てた。手際良く形になっていくそれは、俺の好きな甘い卵焼きの匂いを漂わせる。お腹が小さく鳴いた。
痛い腰をかばいながらソファーに向かう。少しでもテーブルの上を片付けなくては。
乱雑に置かれた週刊誌や、ファッション誌。美容師志望なだけあって、その手のものはとても多い。下手したら3年以上前のとかもある。
「温故知新とはよく言ったものだよねェ」と、前に閑さんが言っていた。
「あれ、また片付けてくれたの?お前が来ると本当に毎日俺の部屋が見違えるねェ」
「閑さんもよく半日でこんなにできますね」
「いやァ」
「褒めてないですからね」
照れたように笑う閑さんにしっかり釘を刺す。どこに照れる要素があったんだ。
まあ、整頓の下手さはともかく、テーブルの上には美味しそうな料理が並んでいく。朝から少し豪勢すぎるような気がするそれは、「お前細すぎるんだから、俺のところに来る時くらいちゃんと食いな」と、至極まっとうな顔で言われたのに起因する。
親が基本家に居ない俺は自分なりに食べているつもりだけど、閑さんから見ると、そうではないらしい。ちなみに、俺から見て俺は別に細すぎることもない、と思う。身長に見合った体型だと、自負しているのだけど。
「ダメダメ。お前、セックスの時とかよく思うけど、本当に腰細すぎ」
「朝からセックスとか言わないでください」
俺も言ったけど。
どうしてこうも、この人は常識から外れたことをするのか。西条のお兄さんよりひどい。
そこまで思って、ふと気がつく。閑さんの髪型って―
「西条のお兄さんに似てる…」
「真似してるからねェ」
色は派手だけど、と言って毛先を弄りながら閑さんは席についた。
「まァ、あの人の髪型はちょっと前髪が長くて邪魔だからヘアピンつけてるんだけどね」
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