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分かってた
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大きな音をたてて、派手に後ろの方へ倒れた及川さんを、俺は肩で息をしながら見下ろす。
「ハア、ハアハア、ハア、ハア」
「イッツぅーーーー……」
顔を歪めて背中を擦る及川さんに罪悪感を感じながら、俺は口端に垂れた唾液を無造作に拭った。
「なんで、こんなことしたんですか?」
「…………」
問い掛けに答えずただ俯いて微動もしない及川さんに、小さなため息を吐くしかなかった。
何聞いてんだ俺……。
わざわざそんなこと聞かなくても、答えはもう分かりきってる事じゃないか。
……嫌がらせだ。
俺はこの人に嫌われている。
俺が近付くとこの人はいつも、眉間にシワを寄せて舌をつきだしてくるんだ。
他の人には笑顔なのに、俺に見せるのはいつもしかめっ面。
嫌われてる。分かってたよそんなこと。
それでも、今日の及川さんは優しかったから、変だなと思いながらも、ちょっと喜んでた自分がいた。
本当にバカだな俺。
「俺、帰ります。ごちそうさまでした」
未だに俯いて顔を見せない及川さんの姿に、俺はもう一度ため息を吐いて、部屋を後にしようとした。
「…………てよ……」
聞き取れない小さな声で及川さんが何か呟いた。
構わず歩を進める。
「……って…………よ…… 待って、よ……待てよ飛雄!!」
及川さんの強声が耳に届いたと分かった時にはもう、俺は、床に押し倒されていた。
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