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ニヤニヤの訳
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ダイニングチェアに腰掛けた俺の前に母さんがカレーを差し出してくれる。
「ハイ!
飛雄の大好きな温玉のせカレーよ~」
すごくいい匂いだ。
いつもなら直様スプーンを持ってがっついてるところだが、今日はやっぱり食欲がわかない。
こんなに大好きなカレーが目の前にあるのに、俺どうしちまったんだ……。
「い、いただきます……」
1つため息を吐きながらスプーンを持つと、ものすんごい視線を感じる。
前を見ると母さんが、ニヤニヤしながら俺を見つめていた。
あれ? この光景前にもあったな。
「なんだよ? ニヤニヤして……」
「ちょっとぉ~ニヤニヤじゃなくて、ニコニコって言ってよ!」
あ……この言葉も同じだ。
これは、及川さんのとこでカレー食べた時と、同じセリフで、同じ光景だ。
「……じゃあ、なんでニコニコしてんだよ?」
「だって、昔から飛雄がカレー食べるとこ見るの好きなんだもん。
まあ、カレーって簡単に出来るけどさ。
それでも私の作ったご飯を嬉しそうに、美味しそうに食べてくれるの嬉しいじゃない。
それに、本当に幸せそうに食べる姿がすごく可愛いから!」
及川さんも、俺が美味しそうに食べるのを見て、嬉しいって思ったのかな?
「男に可愛いとか言うな……」
「男とかそんなの関係ないわよ。
美味しくて好きなものを食べるとき、誰だって可愛くて、笑顔になるでしょ?
お父さんも私が作ったご飯食べるとき、可愛い笑顔で食べてくれるわよ。
やっぱりそれってすごい嬉しくて、また作ってあげようって思えてくるじゃない。
飛雄も恋人が出来たら、嬉しそうに美味しそうに、ご飯食べてあげてね!」
そう言って母さんは、にこやかに微笑んだ。
及川さんも?
俺がカレーを食べてる時、ニヤニヤしてたのは、
可愛いって言って笑ったのは、
からかって、バカにしたんじゃなくて、本当に俺が美味しそうに食べるのを見て喜んでくれてたのか?
嬉しいって、また食べてほしいって思ってくれたのか……。
「なんだよそれ……」
「どーしたのよ飛雄?
いつもみたいに幸せそうに食べてくれないの?」
「ごめん母さん……絶対食べるから残してて。
俺、大切な用事思い出した。
ちょっと出掛けてくる!」
「えーー!
こんな時間に?」
「ありがとう母さん!
行ってきます!!」
俺は母さんに笑顔で礼を言った。
及川さんの気持ちに気づかせてくれてありがとう。
俺は急いで家を飛び出し、全力で走った。
及川さん
あんたの嬉しそうな、ニヤニヤ顔が今すぐどうしても見たい。
悲しそうな、苦しそうな顔じゃなくて、笑顔が。
俺でも及川さんを笑顔に出来るよな……。
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