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「人がいない所の方が話しやすいですか?」
そんなミヤくんの気遣いで、カラオケボックスに入る。
もう随分カラオケなんてしてないから、ミヤくんの手際の良さに、なんだか年の差を感じてしまった。
機種? 利用時間にフリードリンク…。
そういえば、学生時代もノリで連れてこられただけだから、そんなの気にしたことはなかった。
受付の後、伝票のようなものやカゴを一式受け取ると、ミヤくんがこちらを振り向いて。
「将吾さん? 行きましょ」
小首を傾げるようにして言うから、なんかとっても可愛かった。
背は僕なんかより10㎝は大きいんだろうけど。
でも、屈託ない笑顔は、ゴールデンレトリバーを彷彿とさせる。
なのにやっぱり、後ろ姿は格好よくて、男らしくて。
「将吾さ~ん? ここですよ?」
見とれながら歩いてたら、突然ミヤくんの顔が目の前に来た。
整った顔に覗き込まれ、顔が赤面するのを感じる。
「あ、うん、ごめん」
焦って謝ると、やっぱりあの柔らかな笑みを向けられて。
きっと最後になるであろうその顔を、じっと目に焼き付けた。
さて、そろそろ話をしないと。
いつまでも彼の優しさに甘えてるわけにはいかない。
ずるずると長引かせたって、結果は同じなんだから。
彼に無駄な時間を過ごさせるのは、申し訳ない。
ミヤくんと向かい合って座り、意を決して口を開いた。
「ミヤくん、こんなこと言われたら、困るって分かってるんだけど…」
そう前置きして、思いを伝える。
「あの…ね、…好き…なんだ…。
ごめんね、…気持ち悪い…よね…。
…男同士で…こんなこと。
言うつもり、なかったんだけど…でも…諦められなくて…。
迷惑だって、分かってる…から…。
ちゃんと、これで…最後にするから…。
だから……。
最後の、お願い……聞いて…ください…」
しゃくりあげながら、膝の上の拳をキツく握る。
鼓動が激しさをまし、上手く呼吸すらできず、酸欠なのか、くらくらと目眩まで覚える。
なんとか震えを押さえ付けて辿々しく話す僕の言葉を、ミヤくんは黙って聞いてくれた。
顔をあげる勇気は無かったから、彼の蔑みの表情は、見なくてすんだ。
堪えきれなかった涙が、ポトリと落ちた。
「お願いって、何ですか?」
ミヤくんの声が、いつもより低く固く聞こえる。
それだけで、もう心臓がギリギリと締め付けられるように痛む。
ああ、本当に、これで………。
恐怖をこらえて、“お願い”を口にした。
「“嫌い”って、言ってください…。
はっきり、振ってほしい。
そしたら、…ちゃんと……諦める…から……」
ああ、これで、僕の片想いは終わるんだ。
悲しいはずなのに、僕は何故かホッとした。
なのに、ミヤくんの口は、残酷な言葉を紡ぐ。
「なんで、俺がそんなお願い聞かなきゃなんないの?
意味わかんないんだけど」
予想外の返答に、言葉を失う。
怒気を含んだ冷たい彼の言葉が、胸に刺さる。
酷い。
最後くらい、いいじゃないか。
自分の穢らわしさを棚に上げ、彼を睨み付ける。
ボロボロと溢れる涙を拭いもせず、酷い顔を彼の眼前に曝した。
しかし、そこにあるべきはずの蔑みの表情は、見当たらない。
ミヤくんは、悲しそうに眉を寄せていた。
「確かに、将吾さんを恋愛対象として好きかって聞かれたら、今はまだイエスとは言えない。
でも、少なくとも気持ち悪いとは思わない。
また店にも来てほしいし、将吾さんが嫌でなければ、店の外でも会いたい。
こう言う中途半端な返事が、一番残酷だって言うのは、わかってる…けど。
…でも。
たとえ嘘でも、俺は将吾さんを嫌いなんて、言いたくない」
意味がわからず、一瞬涙が止まる。
しかし、次の瞬間はまた嬉しさに涙が流れて。
まだ、彼の側に居てもいいのだろうか。
溢れ出る彼への想いに、蓋をしなくてもいいのだろうか。
彼の笑顔を側で見ていても、いいのだろうか。
きっぱりと言い切ったミヤくんは、混乱して泣きじゃくる僕の横に来てくれた。
震える肩に、そっとミヤくんの手が触れる。
「また…会っても…いいの…?
ホントに、…気持ち悪く…ない?」
ビクビクと問い掛ける僕に、やっぱりあの綺麗な笑顔を見せてくれて。
「当たり前でしょ」
そう言って、ぎゅっと肩を抱き寄せてくれた。
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